「ワクチンなどによって少しずつアフターコロナに向かい始めているとはいえ、まだまだ東京の賃貸不動産市況は良好とは言えません。しかし、一部の投資家は、アフターコロナ以降のインバウンドの回復や、企業活動の活発化を見据えて、積極的な投資に動いています」

都市部から50~100km圏内、利便性の高い郊外地が顕著

コロナ禍でリモートワークがスタンダードとなりつつある中、“必ずしも都市部に住む必要はない”という考え方が加速傾向になりつつある。こうした事態は今後の不動産投資のエリア選びにも大きな影響を与えている。

2020年9月、総務省統計局が発表したリポートに「郊外への住み替えの動きが起きている可能性がある」と記載され、大きな話題を呼んだ。同省が発表している「住民基本台帳人口移動報告」によると、20年5月に約7年ぶりに東京都の人口が転出超過となり、この傾向はその後も続いている。

在宅勤務によって通勤が不要になり、都心に住む必要がなくなったなら、住環境に優れて面積の広い住宅が安価で手に入る郊外に移る。そんな動きが起こりつつあるのだろうか。

大手不動産情報サイト「SUUMO」では、賃貸売買において、10月のぺージ閲覧数で前年同月比において東京23区外の伸びが顕著になっており、特に内房総(木更津)や、三浦半島(横須賀)、伊豆半島(伊東、熱海)などといった都市部から50~100km圏内、新幹線や高速道路で繋がれた郊外地が増えていた。

海ほたる
写真=iStock.com/dreamnikon
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坪単価10万増……郊外で起きたコロナバブル

実際、大都市圏から郊外への移住が起こっているのだろうか。

今、郊外で人気を集める千葉県木更津に拠点を構える「epm不動産」代表取締役・鈴木政晴氏に郊外の現状について聞いた。

「木更津はコロナ禍でバブルと言ってもいいほどの大きな変化が起こっています。まず、注目しておきたいのが『高い利便性』です。直通バスで東京駅や羽田などに1時間で行くことができます」

こうした利便性の高さは、都心に通勤に通いやすいというだけでなく、新たな輸送拠点や製造工場としても注目を集めている。

「周辺には、三井アウトレットパークやコストコ、ポルシェの試乗コースなどファミリーで楽しめるスポットが多くあります。そうした層をターゲットにしたマンションの建築も続々と始まり、5年間で土地の値段も1坪当たり10万円も上がっています」

2020年基準地価によると、千葉の他の地域が、0.7%下落しているにもかかわらず、木更津市や袖ケ浦市などの内房総は東京湾アクアラインの出入り口に近く、若いファミリー層の流入が多いため、値上がり基調が続いている。

「最近では中古マンションをセカンドハウスとして買われる方が多く、1000万前後のマンションが飛ぶように売れています」

こうした事態は、木更津だけでなく熱海や伊東でも起きている。これは、コロナによって都市住民が、本人や家族のニーズ等に応じて、多様なライフスタイルを実現するため、都市の住居に加えた生活拠点を持つ「二地域居住(デュアルライフ)」が広まりつつあるからだろう。