考えたことを記録し、見返す

運動習慣を身につけるのにも、ダイエットを続けるのにも、まず大切なのは現状の把握です。自分の状態を客観的に把握するからこそ、適切に課題に対処できるからです。

そして、これは思考においても同じです。現状把握をしないまま、ただ「考えよう」と頑張っても、いつも同じものごとで繰り返し悩んだり、あいまいな思考を続けたりしがちになります。

よい思考習慣を身につけるには、思考している内容と時間を書き出すことが有効です。

多くの人は、スケジュール帳に「Aの件で打ち合わせ」「B社で商談」などと予定だけを書きますが、そのときに、予定の隣に「打ち合わせで決断するには?」「商談を成功させるには?」と、自分の思考の内容を記録するのです。

そうすれば、スケジュール帳を開くだけで、思考の課題を目にすることになり、隙間時間などを活用しながら、つねに考えるきっかけをつくれます。

また、思考した時間を記すと「なにをどこまで考えていたか」という軌跡もわかるので、すぐに思考を再開でき、ぐるぐる悩まずに考えが明晰めいせきになっていきます。

こうして自分が考えたものごとを記録し、見返していれば、自然と思考習慣を身につけることができます。

いったん思考習慣ができれば、仕事でも勉強でも、創造的なアイデアや解決策をどんどん出せるようになるでしょう。考えるのが苦にならないので、ストレスを溜めることもありません。ぜひ試してほしいテクニックです。

明治大学教授の齋藤孝さん
撮影=塚原孝顕
明治大学教授の齋藤孝さん

「考えるべき問題」と「考えても仕方がない問題」を見極める

考えることが好きになり、習慣になったとしても、つねに答えが見つかり、成果を出せるようになるわけではありません。とくに勉強は、すればするほど、どれだけ考えてもわからないものごとが現れるものです。

そんなときは、考えるべき問題と、考えても仕方がない問題を見極めて、後者についてはいったん考えるのをやめることをおすすめします。

なぜなら、プロの研究者が何時間もかけて難問に取り組むのならいざ知らず、ふつうの人が同じ問題に1時間も取り組むのは、考えていないに等しい場合がほとんどだからです。

最初は真剣に考えていたとしても、糸口がまったく掴めないまま、気づいたらただ考えをめぐらせているだけの場合がよくあるのです。

そこで、「あきらめないぞ!」と粘るのではなく、あっさり考えるのをやめましょう。

そうして時間を空けてからまた考えれば、別の角度から答えにたどり着く場合があります。また数学などは、むしろ答え(解法)を先に見て、それを丸ごと覚えてしまえば、考え方を身につけることもできます。