トヨタ自動車は2月23日、未来型都市「ウーブン・シティ」(静岡県裾野市)の工事に着手した。ジャーナリストで僧侶の鵜飼秀徳氏は「AIが街を制御しロボットや自動運転自動車などの実証実験をする場ですが、このエリアに寺院や神社を建立するのではないか。1970年に長野県の高原に当時のトヨタ自動車販売社長が寺院を作り、そこに豊田章男社長を含めた幹部が毎夏訪れている。交通安全祈願や供養を通して、謙虚に物づくりに励み、社会に寄与するのが同社の心の経営だ」と指摘する――。
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トヨタがつくる未来型都市に寺院や神社が欠かせないワケ

トヨタ自動車は2月23日、未来型都市「Woven City(ウーブン・シティ)」の地鎮式を実施し、工事に着手した。ウーブン・シティでは、ロボットや自動運転自動車などをリアルな生活環境に取り入れ、実証実験の場にするという。

そこで私が強く願うのは、街に「寺院」や「神社」を設置することである。実際、国内には寺院あるいは神社がひとつもない地域(地方公共団体)は、ほとんど存在しない。ウーブン・シティの概念に似合った「ハイパー・テンプル」なる宗教施設をつくって、最新技術を駆使した祭りや弔いなどを実施してもらいたいと願う。

まず、ウーブン・シティの概要について述べよう。場所は、静岡県裾野市のトヨタ自動車東日本の工場跡地だ。地鎮祭で豊田章男社長は、「『ヒト中心の街』『実証実験の街』『未完成の街』がウーブン・シティのブレない軸。多様性をもった人々が、幸せに暮らすことができる未来を創造することに挑戦する」と意気込みを語った。

街全体が私有地なので、道路交通法などの制約を受けることがなく、比較的自由に都市設計ができるという。計画では、自動運転自動車を導入することを前提とした街づくりが行われる。

例えば、日本が長期にわたって直面する超高齢化社会を見通し、安全かつ簡素な移動手段「パーソナルモビリティ」を整備する。地下には流通専用の道路を通す。

将来的に街を走るのは、SF映画に出てきそうな「宙を浮いた乗り物」になるかもしれない。これまでの「空想上の未来都市」が、いよいよ現実のものになろうとしているのだ。

「ウーブン寺院」が2000人以上のコミュニティの結束の原動力

街を制御するのはAI(人工知能)である。さまざまな新技術がリアルな現場に投入され、実証実験されていく。ウーブン・シティには高齢者や子育て世代の家族、発明家を中心にして、将来的には2000人以上の人々が暮らすという。

ウーブン・シティへの期待感は膨らむばかりだ。だが、新しい技術だけではなく、コミュニティのあり方も変えてもらいたいものだ。暴力や差別、偏見のない社会的弱者に優しい社会モデルが、このウーブン・シティで実現できれば、こんなに素晴らしいことはない。

歴史的、習俗的な見地に立てば、宗教施設の建立は欠かせない。たとえば仏教の精神である「慈悲」「寛容」「平等」を実践する場として、寺院は大いに役に立つ。

たとえば、「ウーブン寺院」としよう。ウーブン寺院ではさまざまな苦しみや悩みの受け皿となる。正月や節分、お盆、彼岸などの多くの年中祭祀は四季を感じることができ、また、コミュニティの結束の原動力にも寄与する。