「生の声」を集めることの難しさ

今回のアンケートは、新型コロナウイルス感染が沖縄県内で初めて確認されてから、1年になるのを前に、2月上旬に行った。感染した人々が、何を経験して、何を感じ、今、何を必要としているのか。できるだけたくさんの生の声を集めることで、課題を浮き彫りにして、これからも続くコロナ禍を乗り越えるヒントを探ろうと企画した。

感染を経験した人を直接知っているわけではない。回答してくれる対象の人を募るために、人づてに頼ったり、これまでに感染の判明を発表していた事業所に、従業員への回答を仲介してくれるようお願いしたりを繰り返した。

現実は厳しく、依頼は断られ続けた。

「職場復帰しているが、今も精神的ダメージが大きい。感染を思い出させることは会社としてできない」「なんで協力しないといけないのかと、従業員の反発が予想される」「感染した人は知り合いだが、センシティブな問題なので、声を掛けることはできない」。どれも、感染を経験した人に配慮する、当たり前の理由だった。

それだけ感染をめぐる当事者の心身の負担は大きく、周りに及ぼす影響も深刻であるのだと改めて痛感させられた。

「国がインバウンド推奨してきたのに…」恨み節も

一方で、集まった回答は、選択肢を選ぶ形式の回答のほかに、任意の自由回答の欄にビッシリとした意見の書き込みが目立った。感染したことを気軽に話せない雰囲気の中で、これまで言いたくても言えないことがたくさんあったのだろうと感じさせられる熱量がそこにあった。

豪華客船が消え、ドライブスルー方式のPCR検査場になっている那覇クルーズターミナル=2月28日、那覇市。
筆者撮影
豪華客船が消え、ドライブスルー方式のPCR検査場になっている那覇クルーズターミナル=2月28日、那覇市。

非正規雇用者で「リゾートホテルでの演奏」が仕事という50代男性は、感染したことによる収入減に対する経済的支援、感染したことでかかった入院費などに対する経済的負担への支援を求めた。

300文字以上を使って、ステージが減ったためにアルバイトを探しているが見つからないという苦境や、「国がインバウンド推奨してきたのに、という気持ちがあります」と国が盛り上げてきた観光業にこれまで携わっていながら、コロナ禍になったら補償の対象にならないやりきれなさを訴え、「自助ではやっていけません」と強調した。