「海警法は武器使用権限と国際法との整合性から問題」

海警法は中国の管轄海域で他国船を強制退去させる権限などを海警局に認め、中国の主権や管轄権が侵害されれば、武器使用が許されるとしている。

茂木敏允外相は2月26日の記者会見で「海警法は曖昧な適用海域や、武器使用権限と国際法との整合性から問題がある規定を含んでいる」と批判した。これに先立ち、菅義偉首相も19日の先進7カ国(G7)首脳テレビ会議で、尖閣諸島を含む東シナ海と軍事要塞の人工島の設置が進む南シナ海での中国の軍事行動を問題視した。23日にはアメリカ国防総省の報道官が尖閣諸島周辺での中国の挑発行動を強く警告した。

大漁旗を掲げた日本の漁船
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日本政府は中国の海警船が上陸目的で尖閣諸島に接近した場合、海保や自衛隊が「危害射撃」(相手を負傷させる可能性のある射撃行為)を行えるとの見解も示している。

海警局は警察ではなく、その正体は「第2の海軍」だ

中国の海警局は、2013年に公安省辺防海警と国家海洋局などの4つの組織が統合された海上保安機関である。海警法の施行によって初めて権限が具体的に定まった。

発足時の局員数は1万6000人以上。業務は東シナ海や南シナ海での監視活動だ。最初は公安省の指導下にあったが、2018年に軍指導機関の中央軍事委員会が支配する武装警察部隊の傘下に置かれた。

表向きは警察だが、トップには軍の出身者が多く、海警局は軍部との関係が強い。そのため「第2の海軍」とも言われ、海警船は砲などの火器類を搭載している。海軍を投入すれば国際社会から批判されるため、それを避けるために発足した組織である。日本の海上保安庁とはまったく違う。