さまざまな場面で「説明上手」になれる

この「隠れ操作コマンド」は、別に感情に限らず、何かを説明する時全般に使えます。感情は目に見えない抽象的なものですから、まずは目に見えるものを、隠れ操作コマンドを使って説明しているところを分析してみましょう。

渡辺龍太『おもしろい話「すぐできる」コツ』(PHP)
渡辺龍太『おもしろい話「すぐできる」コツ』(PHP)

例えば、今私が手元に持っている写真に写っているものを、写真が手元にない人に説明する場合、こんな感じになります。

「この写真に写っているのは猫の置物。だけど、陶器とかじゃなくて、スーパードライの缶でできている。誰かの手作りの、リサイクルアート作品って感じかな。そして、結構な本数の缶を使ってると思う。缶の側面の部分を平らにして、それを何枚も貼り合わせてて、ロゴとかもハッキリ見えてる。猫は向かって左の奥に顔を向けて座ってて、たぶん、大きさは500mlの缶の高さぐらいあるんじゃないかな」

イメージできたでしょうか。この説明を聞いた人の頭の中では、次のように、1個ずつ情報が積み上がっていったのではないかと思います。

1.猫の置物
2.陶器じゃない猫の置物
3.スーパードライの缶でできた猫の置物
4.結構な本数のスーパードライの缶でできた猫の置物……etc.

説明する時は「絵描き歌」のような感覚が重要

この時のポイントは、細々とした説明の描写にあるのではありません。とにかく最初に「猫の置物」と、大雑把に口にしていることです。別にここは、「アルミ缶のオブジェ」でもいいし、「リサイクルアート」でも、何でもOKです。最初に、大雑把なカテゴリさえ口にすれば、その後に「言葉」が続くのです。これはまるで、「絵描き歌」を歌いながら描いているようなものです。

また、猫の置物の説明をしている話者自身も、聞き手と同じように、自分が語っている絵描き歌の動画を頭の中で流して見ています。だから、自分が語っている絵描き歌の絵を、より本物に近づけようと、1つ1つ情報を加えていきます。すると、あなたの脳が勝手に、適切な情報をあなたの口から出していってくれるのです。

ちなみに、この猫の置物の画像は、何年か前にネットで話題になった実在するアートです。私のお気に入りの作品なので、紹介させていただきました。気になる方は、「猫 スーパードライ」で検索してみてください。