路上生活をする中学生

小学校を卒業するとき、文集には将来の夢として、「なにか動物にかかわる仕事につきたい」と綴っていたことを憶えています。しかし、その道は中学へ入ったころから、遠く離れていくことになりました。

ちょうど反抗期にさしかかったこともあり、小学校高学年には母親の財布に手をつけたり、夜中に神社に忍び込んで賽銭を盗んだり、悪ガキぶりを発揮していました。それが中学時代にはさらにエスカレートし、いわゆる不良少年に染まっていったのです。

授業をさぼって煙草を吸ったり、バイクで学校へ乗り付けたり。仲間うちで窃盗や喝上げをしたり、暴力沙汰になることもありました。当然ながら学校では問題児扱いされ、あるとき担任の先生が家庭訪問にやってきたのです。

先生は両親と私に向かって、「もう学校には来ないでくれ」ときっぱり言い、それから卒業式まで一度も登校することはありませんでした。家にも居づらくなりやがて家を出ると、ヤクザになった先輩のもとへ転がり込みました。そこにも居づらくなると、外で野宿するようになったのです。

夜は車の下で寝たり、屋根がある駐車場など雨風を避けられる場所を見つけます。閉店後のショッピングセンターに潜り込み、ペットコーナーの大型犬の小屋の中で寝泊まりすることもありました。冬場はそこで何とか寒さをしのげたのです。

ある晩の不思議な夢

結局、ほとんど野宿していたような生活は1年ほど続きました。中学三年生の終わりが近づくと、なぜか先生に「卒業式にはちゃんと出てくれないか」と頼まれ、卒業式だけは出席することになりました。そして、その当日、きっぱり気持ちを入れ替えたのです。

ペット探偵の藤原博史氏
撮影=©新潮社

もうこんなバカな生活はやめて、ちゃんと普通に生きようと。自分でも好き勝手なことはやり尽くしてしまって、そろそろ飽きていたのでしょう。私はすっかり外見も変えて、きちんと仕事に就こうと心に決めました。

中学を卒業後、私は仕事を転々としていました。神戸ではお寿司屋、喫茶店、ホテル。その後、東京でしばらく働き、長野では住み込み寮がある部品工場や、宅配便の作業所で荷分けの仕事に就き、夜勤をつとめました。沖縄では近海でクルマエビを養殖する仕事に就きました。その時です。思いがけない人生の転機が訪れたのです。

ある晩のこと、私は不思議な夢を見ました。いつのまにか自分は「ペット探偵」となり、行方不明になったペットたちを捜索していました。そして大活躍をしている──。まだ「ペット探偵」などという言葉も知られておらず、そんな仕事があるとは思ってもみません。それでもなぜか、ものすごくリアルな夢なのです。