「これこそ自分の仕事だ」

パッと夢から覚めた瞬間、私はひらめきました。

「世界中でこんな仕事をしている人はいないだろうから、僕がこれをやろう!」

私自身はもともと夢や占いなど全然信じないタイプです。けれど、あの瞬間には何の疑いもなく、「これこそ自分の仕事だ」と感じられたのです。

今思えば、あれはただの不思議な夢でもないのでしょう。それまでの自分を振り返ると、いろんな体験がずっとつながっているのですから。もの心ついたころから虫や動物たちと関わり合ってきました。

中学時代、ホームレスのように野宿していたときも、野良猫や野良犬が私に寄ってきたものです。どんな場所なら雨風をしのげるか、安全に身を隠すのには最適かも、イヌやネコに教わりました。つまり、野放しにされた動物に学びつつ、彼らになりきる体験をしていたのです。

「ペット探偵」の夢を見たことはやはり偶然ではなくて、ちゃんと理由があったのだと思います。私は27歳になっていました。私は「ペットレスキュー」開業のため再び上京することに決めたのです。

ペットレスキュー始動

捜索の現場に出ると、不思議とどんな状況も辛くはありませんでした。炎天下や冬の厳しい寒さの中、黙々と外を歩き続けることも苦になりませんし、飼い主さんとのやりとりがしんどいと感じることもありません。それは今も変わらないのです。

依頼は全国各地から舞い込むので、ひとつの仕事が終われば、またすぐ別の場所へ向かうことになります。いわば旅をしながら“狩り”をしているような仕事の仕方、生き方が性に合っているのでしょう。

ママ犬にすり寄る子猫
写真=iStock.com/petesphotography
※写真はイメージです

そしてペット専門捜索会社「ペットレスキュー」を1997年に立ち上げました。一般には「ペット探偵」という仕事がほとんど知られていなかったので、依頼も月1件あるかどうかという苦しいスタートでした。

いざ依頼があればすぐ駆けつけられるように待機しますので、他にアルバイトをするわけにはいきません。それでも、これまでの経験から逆境には強く、何とかなるだろうと楽観的に思えるところがありました。そしてもちろん、この仕事を辞めたいと思うことなど一度もなかったのです。

当時はまだSNSなどネットによる情報拡散は存在せず、ポケットベルを持ち歩きながらチラシとポスターを頼りに足で情報を集めるしかありませんでした。ただし若さゆえの体力には自信がありました。やがてネットの普及とともに口コミが広がり、どんどん仕事が増えていきました。