迷子になったペットを捜し出す「ペット探偵」がいる。1997年の創業以来、約3000頭のペットを見つけ出し、成功率は約7割というペット探偵の藤原博史さんは「中学時代、家を飛び出してホームレスのように野宿していた。だから、ペットたちがどこに身を隠しているかが分かる」という――。

※本稿は、藤原博史『210日ぶりに帰ってきた奇跡のネコ ペット探偵の奮闘記』(新潮新書)の一部を再編集したものです。

ネコをさがすペット探偵の藤原博史氏
撮影=©新潮社

家族5人と虫たちが暮らした6畳2間

私がどうして「ペット探偵」になったのか。その原点はやはり子ども時代にあったような気がします。1969年、兵庫県の神戸で生まれ育ち、もの心ついたときからずっと虫や動物に興味がありました。地面を這いずり回るようにして虫を探し、追いかけ、すっかり同化してしまうのです。

たとえば冬には木の皮をめくると、テントウムシなどが冬眠しています。すると自分もテントウムシになりきって、夜寝るときも毛布をかぶり「僕はテントウムシだ」と思い込んで眠る。地中で冬眠しているトカゲも掘り起こしては観察し、自分もその姿になりきってしまうような子どもでした。

家でもいろんな生き物を飼っていました。アリやチョウ、クモ、カブトムシなどあらゆる虫を捕まえると、お菓子の空き箱などを使って飼育するのです。

ただし、うちは公団住宅です。共働きの父と母、兄と妹の5人家族で6畳2間ほどの狭い団地暮らしでしたから、生き物を飼える場所はうんと限られます。子ども部屋の隅にこたつのテーブルを縦に立てかけて、斜めにできたすき間が私のスペースでした。その中はいつも虫だらけの状態だったのです。