提案4:おじさんよ、有害なステレオタイプから自由になれ
「男らしさ」というステレオタイプには、有害なものもあります。何よりも男性自身を苦しめ、縛り、「枷」や「呪い」「偏見」のもとになっているものも多い。「男は競争して勝たなければならない」「男は一家を養わなければいけない」「弱みを見せてはいけない」という呪いのせいで、男性は強固な鎧を着たようになっている。脱ごうにも脱げない、硬い鎧です。変化を拒む鎧でもある。それは組織にとっても有害なのです。
こうした「男性性を競う文化」こそが企業不祥事、ハラスメント、有害なリーダーシップなどを産む「組織の機能不全の原因」とする研究があります(※1)。米国とカナダのさまざまな組織で働く数千人の従業員を対象にしたアンケート調査では、組織に悪い影響を与える4つの因子として、次のようなものが浮かび上がってきたとしています(括弧書きは白河が追加した事例)。
2.「強さと強靭さ」(長時間労働を自慢してしまうメンタリティ)
3.「仕事最優先」(男が育休を取るなんてとんでもない、という価値観)
4.「弱肉強食」(「勝者総取り」という厳しいビジネス環境)
「男らしさ」を競い、「男らしさ」に異議を唱えると仲間外れになるので、必死に仲間のふりをする。そのためにハラスメントや女性差別的な発言もいとわない。しかしそれは企業にとって大きなマイナスであることが示唆されています。
男性性を証明し続けることは、本人が一番しんどい
これら4つの因子の値が高い企業や職場では、イノベーションに不可欠な「心理的安全」が失われる、内部の規範を重視することから、重大なコンプライアンス違反や、セクハラ、パワハラが起きやすい、離職率が高い、メンタル疾患が多いなど、誰にとっても辛い仕事環境になることが予想されます。何よりも組織の戦略やミッションが達成できません。ダイバーシティや女性活躍も、男性性の競い合いを終わらせないと実現できないのです。
そして何よりも辛いのは「男性性を証明し続けなければいけない」男性自身です。ある論文では「男らしさを繰り返し証明する必要性から、攻撃的に振る舞ったり、不当なリスクを負ったり、長時間働いたり、熾烈な競争に身を投じたり、女性(あるいは他の男性)にセクハラをしたりすることがある」とも述べています。トランプが政権交代時にあれほど往生際が悪かったのは、「男性性を証明」することがやめられないからではないか、と思いました。
これらの要素に思い当たる節がある人は、ぜひ「男性性を競う文化」から脱出しましょう。最初の一歩は「男性ウケ」を考えずに行動することです。
[1]ジェニファー・L・バーダール、ピーター・グリック、マリアンヌ・クーパー「『男性性を競う文化』が組織に機能不全を招く」DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー 2018年12月14日