「芙美子の瞳が『お兄ちゃん、何すんの?』と言っているかのように大きく見開いて、そのまま死んでいきました」。そんな妹の瞳を村上さんは忘れることができない。

「引き揚げの窓口になっていた日本人会が、病弱な子どもたちをこのようにすることはどのように決めたのか、当時の記録を探しても見つからなかったですが、他にもケースがあったと思います」

村上さんの母は娘を失ったショックからか衰弱

村上さんの母は娘を失ったショックからか衰弱し、立つことすらままならなくなった。

数日間、列車に揺られ、ようやく引き揚げをする日本人が集められた葫蘆ころ島へたどり着くと、母親は病院に収容された。数日後、医者からいつもと違う薬を手渡され、何も考えずに母の口に流し込むと、すぐに泡を吹き亡くなった。最後の夜は母の亡骸の横で眠った。

「日本が二度と過ちを繰り返さないことへの思いを聞いてほしい」。そんな村上さんについての10分間のドキュメンタリーが2020年のTokyo Docs(※)で優秀作品賞を受賞した。「戦争の足音を止めるために努力を続けます」。村上さんの声が多くの人に届いてほしい。

※ドキュメンタリーの国際共同製作を含む海外展開を支援するための国際イベント。伊藤詩織氏が監督した『I Killed My Flowers』はヤフージャパンクリエイターズプログラムのHPで無料視聴可能。

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