女性学のパイオニアとして、この分野を牽引してきた東京大学名誉教授の上野千鶴子さん。これまでのキャリアにおける痛恨の出来事とは――。

※本稿は、上野千鶴子、出口治明『あなたの会社、その働き方は幸せですか?』(祥伝社)の一部を再編集したものです。

グループで学ぶ大学生
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20年遅く生まれていたら良いマネージャーになっていた

私のことを一匹狼だと思っている人もいるかもしれないけれど、自分ではどちらかといえばプレイヤーよりもマネージャーが向いていると思ってきました。もし20年~30年ぐらい遅く生まれて企業に入っていたら、たぶんいいマネージャーになっただろうと思います。

ずっと仲間とやってきましたから、一人では何もできないことはよくわかっています。人に頼むのが得意ですし、人に任せたらあまり余計なことは言わないようにしています。

組織を運営していると、細かいことにこだわって、それが通らないなら降りると言う人もいます。私の役割は、まあまあ、って言って場をとりなす調整役です。

組織の中で、何か問題が起きると、それぞれがワーッと私のところに文句を言って来ます。こっちからも来てあっちからも来る。ぶつからないようにうまく両方から話を聞くのはなかなか大変です。それぞれから聞いたことは、胸に納めて相手に言わないようにすることも大事です。

人生最大の痛恨事

マネジメントは忍耐が必要。思うようにいかないものです。男性がなりたい職業のトップスリーは、1番が野球監督、2番は映画監督、3番が指揮者だといわれますが、この3つの共通点は、自分がプレイヤーじゃないということです。現場はプレイヤーに任せて、自分はベンチで胃の痛い思いをして座ってるしかない。マネジメントというのはそういう役割です。

自分はマネージャーに向いていると思っていたので、人生最大の痛恨事は、私自身がプレイヤーとして舞台の上に立ってしまったことです。

なぜかというと、フェミニズム業界に役者が足りなかったからです。だからその役割を引き受けざるをえませんでした。

プレイヤーとして一番風当たりの強い、矢面に立たなきゃいけなくなりました。それは私の目論見とは違っていました。