予想外の異動を経て初の女性執行役へ
事業会社で管理部長を務めていた時期には、本社オフィスの移転や働き方改革も担当。他社でも前例の少なかった「座席のフリーアドレス化」を決めた時は、社内から反発の声も上がった。またしても自信をなくしかけたそうだが、愛宕さんはプロジェクトメンバーとともにワークショップや説明会を粘り強く繰り返し、社内で新しい働き方への意識を共有できるよう奮闘した。
「最初は、社員に改革内容を伝える際、つい『こうしますよ』と上から押しつけるような物言いをしてしまったんです。皆はまだ変化に戸惑っている段階なのに、私はそこまで考えが及ばなくて。反発にあって初めて反省し、以降は現場の意見をよく聞き、一緒に進めることに心を砕くようになりました」
奮闘のかいあって、新オフィスは無事に完成。愛宕さんは300人の社員が生き生きと働く姿を見て、それまで味わったことのなかった喜び――人を輝かせることの喜びを知ったという。
ここでリーダー経験を積んだ後、経営体制の再編に伴ってホールディングスの法務総務部長に昇格。せっかくつくり上げた新オフィスからは離れることになってしまったが、リーダーとしては大きくステップアップ。「重責に身の引き締まる思いがした」と振り返る。
そこからおよそ3年、愛宕さんは法務支援のほか遊休固定資産の売却やコーポレートガバナンス基本方針の策定などに活躍。スケールもやりがいも大きく、「もう法務総務に骨を埋めるつもりでいた」。ところが、54歳になった時、思ってもみなかった部署に異動になる。
「新たなポジションは秘書室長でした。私に与えられた役割は社長の経営活動の補佐や役員会議の事務局、秘書の統括など。突然のことに最初はびっくりしましたが、この役割ならトップの経営判断の現場に触れられる、自分も経営に関与していけるのだと気づいて、やる気がみなぎりましたね」
はじめは手探り状態だったが、取り組むうちに法務の知識が生かせることに気づき、加えて役員の支えになれること、経営者の目線に触れられることにやりがいを感じるようになっていった。
今思えば、これが執行役への大事なステップだったのかもしれない。ここで役員会の事務局を担当したおかげで、自らが役員になっても経営に関する議題に難なくついていくことができた。もちろん、法務のバックグラウンドも大きな強みに。経験してきたことすべてが、ようやくひとつにつながった実感があった。
「コロナ禍によって日本の働き方は急速に変わりつつあります。私も、役員会のDXなど、当社の新しい働き方の実現に向けて取り組んでいるところです。これからも『私がやらなきゃ誰がやる』という思いを胸に、どんどん新しいことにチャレンジしていきたいですね」
■役員の素顔に迫るQ&A
Q 愛読書
『習慣を変えれば人生が変わる』マーク・レクラウ
Q 趣味
ゴルフ
「仕事、私生活、ゴルフが私の人生の3大柱。ゴルフは人との出会いやストレス解消のよき場にもなっています」
Q Favorite item
真珠のネックレス
「祖母、母、私と受け継いできたお気に入りの品。会社のイベント時などに勝負ジュエリーとして身に着けています」