イギリスの東アジア人差別は前年比400%増

こうした被害に遭うのは、明らかに東アジア系の風貌をした人たちだけではありませんでした。ロンドンの金融街で働くジェニー・パティンソンさんは、マレーシア人とスコットランド人の両親を持つイギリス生まれのイギリス人で、報道された写真を見ると、見た目はどちらかというと白人です。彼女は2月、ウォータールー駅でバスを降りる際、男性二人にツバをはかれました。彼女はこう語っています。

「私は自分を異邦人だと感じるんです。自分は見た目が違っていて、他の人に受け入れられていないんだなって。私にとって街中は、もう安全だと感じられません」

ロンドンの差別反対団体であるStop Hate UKによれば、新型コロナ騒動が起きてからイギリスでは東アジア人に対する差別が激増し、地元の中国系コミュニティからの通報が急に増えたと述べています。これまでは中国系や東アジア系からの通報はほとんどなかったのです。人種に起因する差別は、差別的な言い回しで呼ぶ、唾を吐くといったものから、車道に突き飛ばすなど、命の危険に関わるようなものまで含みます。

ロンドン市警察によれば、2020年2月には東アジア人に対する人種差別的犯罪は64件発生し、イギリス鉄道警察では2020年の1月から3月のあいだには42件が報告されています。これは2019年に比べると400%の増加です。在宅勤務や学校閉鎖で公共交通機関の利用者は急減し乗客が少ないにもかかわらず、犯罪は激増しているのです。

マンチェスター大学の社会学研究者であるインシュアン・ファン氏は、「イギリスの中国系コミュニティは人種差別犯罪に直面しても警察には届け出ないことが多いので、水面下の件数はもっともっと多いはずだ」と述べています。

「中国系は差別されても些細なことだと我慢する傾向」

またリーズ大学のビナ・カンドラ教授は、「中国系は差別されても些細なことだと我慢する傾向が高い」と述べています。同大学が400名を対象に聞き取り調査を行ったところ、なんと、半数の人が新型コロナの感染拡大後になんらかの差別を受けたか目撃したと述べています。

またイギリスだけではなく、欧州大陸でも東アジア系に対する人種差別を起因とする犯罪が急増しているのです。オランダのハーグに住むジエ・ソンユーさんはダンスクラスから帰る途中、いつものように自転車に乗って移動していましたが、髭面の男二人に「中国人!」と叫ばれ、殴られかけました。

さらに差別はアメリカでも激増していて、アメリカのピュー研究所によれば、58%のアジア系アメリカ人が「新型コロナ騒動後、アジア人に対する差別が増加した」と答えています。

アメリカの差別反対団体であるAnti-Defamation Leagueは、新型コロナ騒動が起きてからオンライン上で行われている人種や属性に関する差別を監視してきましたが、Telegram、4chan、Gabなど普段から過激かつ差別的な投稿が多いサイトで、東アジア系に対する嫌がらせが急増したと述べています。