裏方として地道に協議・交渉を重ねてきたのが森会長
ちなみに、一部メディアでは後任として安倍晋三大会名誉最高顧問が取り沙汰されている。元首相という点では同じだが、安倍前首相が現役議員であることは差し置いても、果たせる役割は異なるのではないだろうか。
森会長は、これまで16年オリンピック・パラリンピック招致や19年ラグビーワールドカップなどの交渉事を通して、IOC重鎮やスポーツ界のインフルエンサーと信頼関係を築いてきた。19年大会では、世界からの要人たちがセレモニーで常に「Mr.Mori」への感謝を口にされていたのをよく覚えている。
首相を務められた力強さのイメージとは裏腹に繊細で気配りの方としても有名だ。とは言え、日本の立場を守る時には、徹底して戦う。欧米のVIPたちと丁々発止で議論してきた信頼関係があるのかもしれない。安倍前首相が20年オリンピック・パラリンピック招致決定から日本の顔として日本大会をPRしてきた一方で、裏方として地道に協議・交渉を重ねてきたのが森会長だ。
安倍前首相が会長になっても本質的な解決にはならない
安倍名誉最高顧問も全日本アーチェリー連盟の会長としてスポーツ振興に造詣が深い事は間違いないだろう。ただし、上記のような人間関係もある事ながら、「森やめろ派」の一部の論を見ていれば、政界においても大会準備においても森会長とは表裏一体の関係で歩んできた安倍名誉最高顧問の登板では本質的な解決とせず、また次の批判論で議論が進まなくなるだろう。
私は森会長に学んだ事がある。「政治とは決める事であり、決めるとは泥をかぶる事だ」と。私もこれまでも場面場面で森会長に怒られた事がある。それだけ私も無鉄砲に発言したせいかもしれない。16年招致の頃から携わり、今は都議会議員として大会を13年から招致してきた身として大会から目を背ける事はできない。
これから、迎えるさらなるつらい局面で「泥をかぶる方々」とベストな選択肢を見いだしていきたい。政治家もメディアも覚悟が求められる時代。チェンジの時代と言われる現代だが、それには相当な気概が必要だと思う。