「森会長の人柄」も実名で堂々と語ればいい

私が知る限り、森会長は常に新聞など報道には目を通される。だからこそ、今、ご自身が置かれている状況を誰よりも理解されているはずである。今まで、森会長の陰に隠れていた人たちだって近くにいれば皆分かるはずだ。関係者談で漏れ伝わってくる「森会長の人柄」も実名で堂々と語ればいいじゃないかと思う私はバカなのかもしれない。しかし、真実を黙っている事で、東京や日本が間違った方向に進むなら黙っていられない。

2007年の志賀英一関東ラグビー協会会長就任の頃、私は政治家というより、ラグビー協会の中で森会長との接点があった。その際、「政治の本質を知りたいなら小野晋也という衆議院議員の所に行きなさい。本当に政治を学ぶなら彼しかいない」と言われ、すぐに小野さんを訪ねた。そして、毎週毎週、政治哲学や政治家の根本姿勢を学んできた。

ちなみに小野さんは政界のドロドロした権力闘争と真の政治理想は異なると思ったのか「真の政治家になるため」と政界を引退し今は愛媛県で人材育成にいそしんでおられる一風変わった人物だ。小野門下生の裏話をすると、どの政治家にも「森総理が小野晋也を?」と驚かれるのだった。そもそも、森会長は勘違いされやすいのかもしれないと常々思っているのである。

今も人工透析を受けながら、命をかけて大会に取り組んできた

私は「女性蔑視の是正」も「人権尊重」もオリンピック開催には必要不可欠な要素であり、森会長の発言を有耶無耶うやむやにしてはいけないと考えている。ただし、総合的に判断する会長職はそれとは別である事も指摘したい。

森会長は、会長就任時も他に適任者がいるはずだと当初は固辞されていた。それから、肺がんを患い2015年3月に肺を除去され病院からつえをついて組織委員会に通われ、今もまだ定期的に人工透析を受けておられる。それでも、ご自身の大会への責任を誰よりも重く受け止め、職務に邁進されてきた。

当初は2016年オリンピック・パラリンピックに名乗りを上げた東京だが、これも当時の石原慎太郎知事と森会長が今後の持続発展的な「世界で一番の都市」実現に向けての夢の構想を決めたからこそだった。

2009年にラグビーワールドカップ日本大会の開催が決まって以降、世界中から日本開催を否定的に見られながらも19年に大成功に導いたのは、森会長が欧米と戦ってきたからこその結果である。これだけ「命」をかけて大会に取り組んできた会長の言い分が理解されずに、「命」をかけない方たちが仮にトップになり最終コーナーを回れば、今の世間が思っている以上に東京の損失は大きくなるはずだ。