東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長の発言が国内外、男女を問わず多くの批判を呼んだ。学習院大学 経済経営研究所の清水直美さんは「残念ながら日本の企業には、まだまだ森喜朗氏のようなオジサンがたくさん潜んでいる」と指摘する。今回のように口に出して大きな問題にはならないだけにかえって厄介なオジサンたちの意識改革に、本気で取り組む企業も増えてきている――。
日本企業に大量に潜む森喜朗のようなオジサンたち
東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長による、臨時評議員会での女性を巡る発言について、波紋が広がっている。「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかります」「組織委員会にも女性はいるが、みんなわきまえておられる」……こうした発言は女性蔑視としてニュースで取り上げられ、海外メディアにまで報じられる事態となった。
一方で、この状況はジェンダーギャップ世界121位の日本社会における女性活躍の現状と受け取ることもできる。言うならば、日本の企業にはまだまだ森喜朗氏のようなオジサンがたくさん潜んでいるのだ。
日本企業の女性活躍促進には、トップの意思決定による「トップダウン」が重要であり、それが結果に大きく影響することは近年周知されている。例えば、新浪剛史氏(現サントリーホールディングス株式会社代表取締役社長)がローソンのCEOだった際にダイバーシティと女性活用の重要性を説き、まずは意思決定の場である取締役から女性を増やし、その下の層に浸透を図ったことから、現在ローソンでは新卒採用の男女比は同率であり女性管理職比率も上昇しているなどの成果を上げている。強力なトップダウンによる成功事例である。
トップの下の「偉いオジサン」たちに潜む女性活躍反対派
しかし私は大手企業の人事部へのインタビューを重ねるうち、そうした達成に至るまでには、人事側の地道な努力が不可欠であったことを実感した。例えばとある大企業では、トップであるCEOが女性活躍促進の重要性を説いているにもかかわらず、トップの少し下の「偉いオジサン」たちには依然として「女性活用反対派」が多く存在し、その層が大きな障壁となっているというのである。