丸紅が2024年までに新卒採用する総合職の4~5割を女性にすると発表した。雇用ジャーナリストの海老原嗣生さんは、「よくありがちな女性活躍の“名ばかり施策”ではなく、かなり本気度を感じる」と指摘する。男社会の極みだった総合商社が、変わるきっかけとなったクライアント企業の“ある変化”とは――。
丸紅新本社ビル(中央)=2020年4月14日、東京都千代田区大手町[時事通信ヘリコプターより]
写真=時事通信フォト
丸紅新本社ビル(中央)=2020年4月14日、東京都千代田区大手町[時事通信ヘリコプターより]

丸紅は本気だ

丸紅が新卒採用にクオータを設けたそうだ。総合職の女性比率を4~5割にするという。

私は、総合商社がやるからには「本気」であり、大向こう受けを狙ったアドバルーンなどではないと考える。もし、この話をメガバンクが喧伝していたら、言葉通りに受け取りはしなかっただろう。

新卒大学生にとっては、総合商社とメガバンクは人気業界の双璧といえる。ただ、企業としての印象は全く異なる。どちらも2000年前後に倒産間際と言われるくらいの苦境にあった。そこからメガバンクは国策的な合併をさせられ、その見返りとして資本注入を受け、何とか立ち直った。が今でも旧行派閥のせめぎ合いなどの噂が絶えないという。

「名ばかり施策」が多いメガバンク

それ以前のバブル期までは、護送船団方式に守られ、横並び業態でみながおいしい汁を吸ってきた。当然、監督官庁の胸先三寸で明日の業績が決まるために、旧大蔵省担当、通称MOF担を置いて密着、果ては接待汚職事件まで起こすに至っている。つまりいつの時代も、お上と世間体を重視している性癖が染みつき、ゆえに、官公庁や世間受けの良い、その実中身のない「アドバルーン」を揚げ続けるのだ。

女性活躍関連でも、役職者をいきなり増やすために、ベテラン一般職をいきなり課長に抜擢したり、男性の育児休暇取得率をあげるためにほんの数日でいいから育休を取らせる、といった「名ばかり施策」を多々、行ってきた。

対して総合商社は、過去何度もの構造不況を自力で乗り切りってきた。それだけに、官公庁や世間向けのポーズも不要で、自ら良しとする経営方針をとる。だからこそ、新卒採用の女性クオータにも本気度を感じるのだ。