うまくいかないときはパッとやめる

クライアントから外堀が埋まるまで火が付きづらい構造の総合商社は、変化の殿しんがりとなることが多い。ところがそこから一丸となって突っ走り、いつの間にか先頭に躍り出る。そんな力を持っている。

また、うまく行かなかった場合の退き際も潔い。そういえば、7~8年前、30代を中途採用するというムーブメントがあった。商社冬の時代に新卒採用を絞った世代が30代になったためだ。ただ、30代で採用して、いきなり商社の仕事ができる人は限られている。ということで、取引先、なかんずくクライアントから少なからず採用することになった。それは当然、在籍企業からのクレームなどにも発展する。そこで、関係が悪化する前にパッと中途採用を終えてしまった。そんな早業を垣間見たものだ。

今回の女性クオータも、見ものだと思っている。

海老原 嗣生(えびはら・つぐお)
雇用ジャーナリスト

1964年生まれ。大手メーカーを経て、リクルート人材センター(現リクルートエージェント)入社。広告制作、新規事業企画、人事制度設計などに携わった後、リクルートワークス研究所へ出向、「Works」編集長に。専門は、人材マネジメント、経営マネジメント論など。2008年に、HRコンサルティング会社、ニッチモを立ち上げ、 代表取締役に就任。リクルートエージェント社フェローとして、同社発行の人事・経営誌「HRmics」の編集長を務める。週刊「モーニング」(講談社)に連載され、ドラマ化もされた(テレビ朝日系)漫画、『エンゼルバンク』の“カリスマ転職代理人、海老沢康生”のモデル。ヒューマネージ顧問。著書に『雇用の常識「本当に見えるウソ」』、『面接の10分前、1日前、1週間前にやるべきこと』(ともにプレジデント社)、『学歴の耐えられない軽さ』『課長になったらクビにはならない』(ともに朝日新聞出版)、『「若者はかわいそう」論のウソ』(扶桑社新書)などがある。