地方から中央政府への“忖度”が働いている

この男性もそうしたひとりだが、実家がある地区は地方の省の大都市で、今年になってから新規感染者は出ていない「低リスク地区」。吉林省などの「高リスク地区」ではない。そのため、帰省の際に「陰性証明は必要ない」とされていたので、男性はほっと胸をなで下ろしていたのだが、男性によると「なぜだか分からないのですが、うちの都市でも、農村と同じく厳しい措置を求められるそうなんです」というのだ。

男性は「他の省出身の同僚たちにも聞いてみたのですが、どうやら他の大都市も同じような状況だそうです。地方から政府への一種の“忖度”というのでしょうか。公式的な発表やニュース報道などでは、一部地域を除いて、『PCR検査の陰性証明は必要ない』とされているのに、実際は、各地方都市が自らハードルを上げ、内々に通達を出している。これは、できるだけ面倒を起こさないよう、自分たちの都市に帰省してくる人を極力減らしたい、できれば帰省するな、ということなんでしょうね……」とため息をつく。

この男性の場合、家族に会いたい気持ちが強いので、今のところは、帰省直前にPCR検査を行い、陰性証明を取得して帰省したいと考えているが、「問題は実家がある大型マンション(団地)のゲートをくぐるときにチェックされることなんですよね……」と打ち明ける。

管理人に逐一チェックされる中国人の暮らしぶり

中国の大型マンションは周囲が高い鉄柵などで囲われていることが多い。1つのマンション群は2~3棟と小規模の場合もあるが、10~30棟以上もある場合もあり、小さな町のようになっている。そこは中国語で「小区」(シャオチー、住宅区画)と呼ばれており、大型の「小区」だと敷地内に公園や子ども向けの遊び場、売店、レストランまであったりする。

男性の実家があるマンションも10棟以上ある大型のマンション群で、ゲートには数人の管理人や警備員が常駐していて、出入りする人をチェックしている。居住者は、あらかじめ支給されている入館証のようなパスをゲートで見せるようになっている。

上海の密集したマンション
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通常なら、ゲートは少し開いているので、毎日スーパーに行く人などは顔パスで通れる場合もあるが、来客がある場合は、事前に申請しておくか、そうでない場合は、ゲートにいる管理人から住民に確認の電話が入ることもある。自動車の入場も同様で、勝手に敷地内に入ることはできない。

この男性も、帰省して敷地のゲートに到着した際は、住民の家族である証明が必要であるのと同時に、今回は陰性証明も見せなければ中に入れてもらえないが、その際、「○号棟の○△さんのところは、○日に上海から一人息子が帰ってきた」ことも管理人にしっかりチェックされる。