七草粥の「苦味」=「毒」が身体によい

今では、野菜を食べることによって身体に入ってくる少量の毒物が健康に良い、という考えが有力です。

新鮮な野菜
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「えっ、私達って、野菜を食べることによって毒物を食べているの? ウソでしょ」と思った人も多いのではないでしょうか。

生物は敵から身を守るために、走って逃げたり、隠れたりすることができます。

ところが植物は根が生えているので逃げたり、隠れたりすることができません。

でも植物もしたたかです。何千万~何億年もの年月をかけて、身を守るための防御策を編み出したのです。それは、植物が作り出す苦味のある化学物質です。これがあたかも「天然の殺虫剤」のような役目をはたして害虫から身を守っているのです。

ピーマンやゴーヤなどの野菜を食べた時、「苦い!」と感じる、あれです。私たちが植物由来の食品を食べる時、これらの少量の殺虫剤も一緒に摂取してしまい、私たちの身体の中にある細胞が軽いストレスを受けるのです。

この軽いストレスにさらされることによって、あとから強いストレスを受けても、これに対抗できる抵抗力を身につけることができるのです。

日本には古くから、1月7日に無病息災を願って七草粥を食べるという風習があります。七草粥に含まれる春の七草は、特にこの苦味が強いようです。きっと昔の人は、この苦味が無病息災に良いということを経験から知っていたのでしょう。

睡眠不足だとワクチンの効果が半減する

野菜の毒のように、弱いストレスにさらされた際に、それに対応することで、強いストレスに対する抵抗力を得ることを「ホルミシス効果」といいます。

ホルミシスは、言葉こそ最近使われるようになりましたが、その概念自体は何も新しいものではありません。毎年、冬になる前にインフルエンザのワクチンを注射する人が多いと思いますが、このワクチンも、ごく弱い病原体や死んでしまった病原体、すなわち、ある種のストレスを体内に注射することによって、抗体を作って、実際にインフルエンザウイルスが身体に入ってきた時にこれを排除する仕組みです。

このインフルエンザワクチンの効果と睡眠時間に関する、面白い研究があります。健康な人を2つのグループに分けて、一方のグループは7時間半~8時間半の睡眠、他方のグループは4時間の睡眠を6日間続けてもらい、6日目にインフルエンザの予防接種を受けてもらうのです。そして数日後に血液検査を行い、抗体の産生具合を調べると、7時間半~8時間半の睡眠グループに比べて、4時間睡眠グループでは、抗体の産生量が約50%しかありませんでした。

睡眠不足は、病原菌に対する免疫力が弱くなって、風邪やインフルエンザになりやすくなることも判っていますが、予防接種の効果も半減させるのです。