カレーがアルツハイマー病を抑える理由

もう一つ、ホルミシス効果によって、身体の中でどのようなことが起こっているのか、カレーの香辛料のクルクミンを使った研究をご紹介しましょう。

インド人にはアルツハイマー病が少なく、アメリカ人の4分の1の発症率であることが昔から知られています。

インドで地元のバザール
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カリフォルニア大学ロサンゼルス校のコール博士はこれに注目して、カレーの香辛料に含まれるクルクミンがアルツハイマー病に効果があるのではないかとの仮説を立て、マウスを使って調べました。

その結果、クルクミンが直接フリーラジカルを除去するのではなく、クルクミンが軽いストレスとなり、脳細胞がみずから持つフリーラジカルに対する抵抗力を強化することによって、脳細胞のダメージを予防していたことがわかりました。

このように、ストレスにも「良いストレス」と「悪いストレス」があるのです。えてしてストレスは身体に悪いもの、と決めつけられがちですが、まったくのストレスフリーな環境に置かれると、ヒトは自律神経失調症状態となることも研究によって判っています。

ストレスの性質、それがかかる時間の長さなどにもよりますが、「良いストレス」は自分を高めてくれます。よきライバルと切磋琢磨しあって、互いに実力を伸ばしあうことなどが典型例でしょう。

一方、悪いストレスは「やらなくてはいけない」「頑張り続けなくてはいけない」と自分を強制的に追い込み、自らの意思とは無関係にある行動を続けることにより受けるストレスです。この悪いストレスが続くことによって、さまざまな身体的な異常が現れます。首や肩の凝り、頭重感や頭痛、耳鳴りやめまい、などです。また、長時間のストレスにさらされると、がんになりやすくなることも研究結果から判っています。

孤立のストレスは心疾患・脳卒中リスクを3割増しにする

では、ヒトにとって最大の「悪いストレス」とは何か。それは、「社会的孤立」です。

米国ブリガム・ヤング大学のジュリアン・ホルト・ランスタッド教授たちは、1980~2014年に行われた研究で「孤独」、「社会的孤立」、「1人暮らし」のいずれかの言葉と「死」、「生存」のいずれかの言葉の組み合わせ、すなわち「孤独」と「死」の両方をもつ、あるいは「1人暮らし」と「生存」の両方をもつ、等の1384件の研究の中から、70の研究を選んで調査を行いました。

その対象となった人はトータルで340万7134人、平均年齢は66歳、経過観察期間は平均7年間でした。その結果、「社会的孤立」によって29%、「孤独」によって26%、「1人暮らし」によって32%、死亡リスクが高まることが示されました。これは肥満の約2倍、タバコに換算すると、なんと1日15本喫い続けた死亡リスクに相当します。