悪客に対する制限を作るべき
さらに強い違和感を覚えるのは、「命令」でもないその「要請」に従わなかった場合、店名を公表すると国が示唆したことだ。日本はいつから国民を晒し者にするような国になったのだろうか。
先日、コロナ患者を受け入れない医療機関も病院名を公表すると発表があったが、このSNSの時代、当該者を世間に総攻撃させようとする国の方針は、ただの「大人のいじめ」でしかない。
このように、時短営業要請に応じても逆らっても報われることのない飲食店だが、そこで1つ思い浮かぶ疑問は、「どうしてこれほど努力している店側だけにこれだけの負担を強いるのか」だ。
各現場取材をして毎度痛感するのが、この国にある「お客様至上主義」だ。
筆者は「客が神」とするこの日本の社会的構造が大嫌いである。根がひねくれているのだろう、相手が誰であれ、人間同士の付き合いには一定の節度が必要だと思う一方、店員に対してはそれ以上のモノもそれ以下のモノも求めない性格が大きいところだが、現場で働く「エッセンシャルワーカー」たちから、これまでさまざまな「神話」を数多く聞いてきたのも大きな一因になっている。
全て飲食店側のせいにされる不公平さ
日本には実にさまざまな“神”がいる。
運送業界には、到着時間帯を「17~19時」に指定した荷物が17時1分に届いた際、「なんでこんなに早いんだ。17~19時だったら普通18時だろ」と怒鳴る神、また飲食業界には、バイキングのパンをハンカチに包んで持って帰ろうとする神なんていうのも存在する。
余談になるが、筆者が「客が神ではない」と認識したのは、外国に住んでいた時だ。
日本で0円で売られていた某ファストフード店の「スマイル」を、現地の同列店で同じように注文してみたところ、店員のスマイルどころか、これまで見たことがないほど深い眉間のシワと対峙し、初めて笑顔にも対価が必要だということに気付かされた。
国のガイドラインに従い、飲食店がいくらこまめに店内を消毒し、アクリル板を立て、時短営業しても、来店客が好き勝手やれば全ての努力が水の泡。にもかかわらず、こうしたマナーの悪い客に対しては「マスク」「検温」「消毒」以外、何の決まりも基準もペナルティも科されず、いざ店内でクラスターが発生すれば全て飲食店側のせいされるのは、非常に不公平ではないだろうか。
「おもてなし」や「お客様至上主義」で思い上がる店側のルールに従わない「疫病神」に対しては、強制退店させるくらいの権限を店側に持たせてもいいのではないかと、筆者は強く思っている。