同調圧力が、知らぬ間に誰かの首を絞めている
国からの要請以外にもう1つ、飲食店自身に時短営業をさせている要因がある。
世間に漂う「同調圧力」だ。
昨年の緊急事態宣言時、多くの飲食店が休業し、車体の大きなトラックが行き場を失う中、営業を続けていたあるラーメン店は、文字通り彼らのオアシスだった。
現場から届いた感謝の思いを記事化しようと同店に取材した際、「店を紹介させてほしい」と打診したところ、こんな答えが返ってきた。
「気持ちは嬉しいし、是非と言いたいところだが、周囲の飲食店が自分のところだけ店を営業していることに対してのやっかみがあるから、今回はお受けできない」
現場の状況をろくに知りもしない人によって作られた杓子定規なルールに、何の事情も知らない人間たちが「ナントカ警察」と化して監視する社会。そんな日本の中にある「みんな一緒でなければならない」という感覚は、知らぬ間に誰かの首を絞めていることもあるのだ。
客が本当の「神」ならば……
そんなルールに縛られ続ける飲食店から、最近ある言葉が登場して話題になった。「黙食」だ。
「その2文字を店内に掲げる際は、批判覚悟だった」という店主の心からの訴えは、現在多くの飲食店や商業施設、利用客の共感を呼び、店の入り口に同店が作成したPOPを掲げる店が増え続けている。
このまま飲食店が悪者になるのも嫌なので、積極的に黙食を推奨していきます。外食がダメなわけじゃない。食事中の無防備かつ至近距離での会話がいけないのだから、黙って食べれば問題ないはず。その他の対策を行うのは必須として。
— ミツジ@マサラキッチン (@masala_mitsuji) January 15, 2021
POPを作りましたのでご自由にどうぞ♪https://t.co/SjEw0kaiFp pic.twitter.com/Txec2w2t6V
今後しばらく続くであろう「ウィズコロナ」の生活。感染対策と経済活動の両立を目指すなら、この先やるべきは、店に対する一律の時短営業要請や、子どもじみた「店名公表ペナルティ」の設置ではなく、「各業態や店舗に合ったルール作り」と、この「黙食」や、時にはそれ以上の「客への強い要請」だ。
客が本当の「神」ならば、むしろ店の願いをかなえてやるのが本当の姿だと筆者は思う。