世界中が新型コロナに翻弄される中、多くの企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)を、コロナ禍を乗り越えるカギととらえている。しかし、DXの専門集団Kaizen Platformの須藤憲司さんによると、「DXが期待通りの成果をあげている企業はたった5%」。そして、大多数がつまずく理由は、「問題設定」にあると説く――。
※本稿は須藤憲司『90日で成果をだすDX入門』(日本経済新聞出版社)の一部を再編集したものです。
最初の3カ月で成否が決まる
私たちは経営陣や事業責任者向けに、DXを軸に設計した「事業改善のためのワークショップ」を実施してきました。このワークショップの目的は、DXに向けた問題設定の質を高め、90日後に自分の事業でDXを正しく行っていくきっかけを作ることにあります。
DXで大切なのは「できること」から小さな成功を積んでいくことです。そのためにも、この戦略マップで計画する階段の1段目としては「90日以内に結果がわかること」を推奨しています。
理由はいくつかあります。一つは、それ以上の期間が必要なプロジェクトだと、担当者の熱気が冷めてしまうことが少なくない点です。さらに、他部署との調整が入るようなプロジェクトを掲げると、往々にして90日ではゴールを達成できなくなることです。半ば強制的に、自らコントロールできる範囲に課題をフォーカスせざるを得なくなる状況をあえて作り出しています。
また、私はよく「DXは終わりがない」と言っていますが、どれほど大規模なプロジェクトであっても「最初の90日間で何をするか」によって成否が分かれます。たとえば、20年単位の都市計画しかり、M&Aによる買収劇しかり、最初の3カ月の過ごし方を設計し、感覚をつかんでおくのが、継続的にDXを続けていくためにも、とても良い経験となります。振り返りが四半期で実施しやすいのもポイントです。