「ネオ証券化構想」は、セールスフォースに似ている

【田中】そういう意味では、今回のネオ証券化構想で、私がすごく似ているなと思ったのが、カスタマーセントリック、顧客中心主義で事業展開してきたセールスフォースです。

セールスフォースという会社はマーク・ベニオフさんという方がCEOをされていて、99年にセールスフォースを創業した際に立てた天命はカスタマーサクセス。それまでは請負型で相当な金額をチャージしていたものを、ソフトウェア・アズ・ア・サービスという形で、サービスとしてソフトウェアを提供した。課金形態も今でいうサブスクですよね。

サブスクリプションというのはご存知の通り、顧客側で成功が起きないと契約を継続してくれないわけで、それに切り替えた。ソフトウェア・アズ・ア・サービスのSaaSに対して、今回されているのはセキュリタイゼーション・アズ・ア・サービス、つまりはサービスとしての証券業のようなもの。その中核にはカスタマーセントリックがあり、顧客側でカスタマーサクセスが起きないと収益が上がらない、サービスとして提供していくということでいうと、2者間では非常に類似点がありますよね。

あらゆる中で一番大事なのは「量」

【北尾】そうですね。例えば銀行は、機能が物凄くたくさんあります。この機能を、それを欲する企業にどんどん提供しましょうと。それが住信SBIネット銀行で進めている「ネオバンク化構想」です。そんなことをして商売大丈夫? と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、それによって我々の顧客基盤もぐっと増える。こういう戦略の一番重要なところは、お客さまの数ですね。

SBIホールディングス 北尾吉孝代表取締役社長

先ほどの量質転化の法則も、毛沢東の『矛盾論』に書かれている「量の蓄積が質を規定する」というのも、量というのはあらゆる中で一番大事ということです。だからこの量をいかにとるか、そのためには質も良くないといけない。そして、お客さまが一番何にセンシティビティ(敏感)かというと、サービスに対する価格です。

価格に対するセンシティビティが一番高ければそこを徹底的に、極限まで追求するということになります。実際にアメリカではそういう現象が起こっているわけですよね。これを日本企業がやらないのなら、いずれアメリカ企業が参入してくるでしょう。

【田中】誰かがやるわけですね。

【北尾】誰かがやるわけです。これはインターネットの進化がもたらす、一つの必然だと思いますね。