ビットコインの上昇は法定通貨の減価を予想しての動き

数々のインフレに強い資産の中でも、この数カ月ではビットコインの価格上昇がすさまじい。

この3連休のような乱高下を繰り返しながらも昨年10月中旬の1ビットコインおおよそ120万円だったものが、今年1月8日には430万円まで急騰。12日の本稿執筆時も360万円台で推移している。

財政ファイナンスでお金がジャブジャブとなり、法定通貨が減価していくのなら発行数に上限のあるビットコインに人気が集まるのは当然と言えば当然だ。

読者の方の関心は「今後ともビットコインの価格は上昇するのか?」、それとも「今がバブルで近い将来破裂するか?」だろう。それをこの論考では考察してみる。

ショッピングカートにビットコインを積んだビジネスマン
写真=iStock.com/tommy
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株価、ビットコインは金融引き締めにより終焉するのか

世の中、株価やビットコインの上昇で浮かれている人も多い半面、バブルだと警戒警報を鳴らす人も多い。

バブルと言えば、思い出すのは日本の1985年から90年にかけての日本のバブルだ。あの時、消費者物価指数(CPI)は当初、0.3%~0.5%と今の日銀が目標とする2%よりはるかに低かった。

にもかかわらず経済は狂乱した。土地と株という資産価格の高騰による資産効果(不動産や株を持っている人が儲かったつもりになり消費を増やす)が強烈だったからだ。

バブルと気が付き、その悪影響を憂慮した日銀の金融引き締め開始により、バブルははじけた。しかし引き締めが遅れたことで日本はその後の30年を失ったと言われている。

このバブルの経験で、各国中央銀行はいろいろなことを学んだ。とりわけ日銀は、資産インフレ時には早目早目の金融引き締めが必要なことを学んだはずだ。

当時の澄田智日銀総裁は「確かに87年ごろから東京の地価は2ケタの上昇率を示し、株価もかなり速いペースで上昇していました。それなのに金利引き上げを実行しなかったのは、後から考えると、認識が不十分だったと答えるしかありません。(中略)ただ、土地や株、それに書画や骨董といった資産の価格だけが急激に上昇している意味を早く見抜けなかったことについては、私がその責めを負わなければならないと思っています」(『<真説>バブル』日経BP社)と懺悔している。

世界の中央銀行は強烈な引き締めができない

資産価格の高騰を見逃がし引き締めが遅れたことを懺悔している日銀が、前回の轍を踏まないよう早期の金融引き締めを開始するなら、株、ビットコインのバブルはそろそろ終わりかもしれない。

しかし、世界の中央銀行は強烈な引き締めができない。特に日銀は、全くと言っていいほどできないのだ。異次元緩和という非伝統的金融政策を実行したせいで、引き締め手段が無いからだ。ちまたで論じられている「日銀の出口論」とは「引き締め方法があるか否か」の議論でもある。