もともとNTT民営化はアメリカのAT&Tの分割にならったものだ。AT&Tはあまりに独占体として強くなりすぎたために、反トラスト法に則って7つの地域電話会社(ベビーベル)と1つの長距離電話会社(AT&T)に分割された。しかし時を経て、ベライゾンとAT&Tの2つに再統合された。この2社は携帯電話分野でも非常に強く、ドイツテレコムやソフトバンクなどの外国勢がアメリカ市場へ参入してもビクともしていない。一方で、同じように分割した日本のNTTはいまだに分割したままで、再統合の道はかなり厳しい。
再統合してグループのリソースを生かせば、リスクの高い海外に打って出る以前に国内でできることがまだたくさんある。たとえば電話料金を何十年も支払ってきた顧客の個人情報は、極めて貴重な信用情報だ。これを活用してNTTが金融関連事業を始めるなら、あっという間にサービス展開が可能。
稼げるネタが無限に広がっている
さらに言えば料金回収の仕組みも持っているから、NHKの受信料その他の料金回収代行も簡単にできるはずだ。アントグループの芝麻(ゴマ)信用のようなフィンテック事業を手がけるもよし、eコマースをやるもよし。稼げるネタが無限に広がっている。
ただし、新しい事業を展開していくうえで問題になるのが、再びNTT法である。法律によってNTT(東日本と西日本、持ち株会社)の事業内容は厳しく規定されていて、新規事業には総務省の認可が必要になる。
「NTTを再統合せよ」というと、ソフトバンクの孫正義会長兼社長やKDDIの守護神である稲盛和夫氏などは大反対するだろう。しかし、ソフトバンクが世界最大規模のサウジアラビアのファンドなどを味方に付けて世界中で大活躍している世の中なのだから、「日本で強者だから」という理由で、NTTがいつまでも重荷を背負わされて自由に戦えないのは理不尽、という世論も当時よりは強くなってきている。
ということで、実はNTT法の改正や撤廃に向けた政府への働きかけが始まっていて、アハモの発表が菅政権への貢ぎ物だとしても、まったく不思議ではない。