プロが重要視する「シャープレシオ」を知っているか

シャープレシオとは、いかに効率よくリターンを出しているかを表す指標です。

ヘッジファンドを立ち上げる際、僕はメンターと資金集めに奔走しましたが、そうした場で投資家から問われるのはパフォーマンスではありません。シャープレシオです。標準偏差(価格のバラツキ)を抑えながらパフォーマンスを得ることが重要であり、どれだけ価格のバラツキを抑えられているかが問われるのです。

高橋ダン『僕がウォール街で学んだ勝利の投資術』(KADOKAWA)
高橋ダン『僕がウォール街で学んだ勝利の投資術』(KADOKAWA)

価格のバラツキが大きいと、ストレスは大きくなります。「もう投資なんかやめよう」と思ってしまうかも知れませんし、もしも大きく動いている時にお金が必要になれば損してしまう可能性もあります。バラツキが小さければ安心して投資が続けられますし、値下がりしている時に売らざるを得ない、といった不運に遭う可能性も低くなります。単に収益率が高いだけでなく、標準偏差も低いこと、すなわち、シャープレシオが高いことが重要、というわけです。

シャープレシオの計算式で、分子になるのは、ポートフォリオの収益率から、安全資産の収益率を引いたものです。安全資産の収益率とは、値下がりするリスクのない資産の収益率。分母は、ポートフォリオの収益率の標準偏差です。標準偏差とは、バラツキの大きさのことです。

ウォール街では、シャープレシオが1以上なら合格、2ではかなり素晴らしい、という評価です。3を達成するのはかなり難しく、月単位でパフォーマンスがマイナスになることがほとんどないといった運用でなければ、3にはならないでしょう。

ウォール街「投資における損にはふたつの損がある」という諺の意味

ウォール街には、「投資における損にはふたつの損がある」という諺があります。ひとつは「お金を失う」という実質的な損、もうひとつは、「痛い想いをする」という、エモーションの損です。

値下がりしたところから気持ちを奮い立たせ、次の戦略を立てるのは、容易なことではありません。損をしてしまったというマイナスのエモーションが邪魔をして、焦りが生まれ、合理的に考えるのが難しいのです。その結果、売却を急いでしまう、投資するのをやめてしまう、といった行動をしてしまう危険性もあります。

ウォール街では、高いパフォーマンスが出て嬉しいという喜びの大きさより、損した時の落ち込みの方が感情の幅が大きいと言われており、多くの心理調査テストでも、そうしたことが指摘されています。このことから考えても、長期的なパフォーマンスをあげること以上に、投資を継続するためにも精神的なダメージを抑えることが重要です。僕が大きな損を出してしまった時、完全に立ち直るまでに何カ月もかかりました。

あなたも、得した経験より、損した時のことを鮮明に覚えている、ということはありませんか? 動物にはそうした傾向があり、襲われて恐怖を体験すると、襲われないような行動をとってしまうのです。再びこんな想いはしたくない、投資など二度としない、と思ってしまい、投資をせず、預貯金だけで運用するというのは、人生においてとてつもなく大きなリスクです。本当にもったいないことになります。それほど変動率の大きさは重要であり、結果的にパフォーマンスに影響するのです。