霞が関官僚の深夜勤務が常態化している

たまらないのは政策を実行する現場の官僚たちだ。突如、全国一律となって、キャンセル料の扱いや事業者へのキャンセル分の補償などの細部の決定に忙殺された。12月15日午前中に赤羽一嘉国交相が詳細を発表するまで、まさに徹夜での調整作業が進められた。

「働き方改革」が求められる中で、霞が関官僚の深夜勤務は常態化している。そのほとんどが政治家に「振り回されている」結果だ。菅内閣発足時に、文部科学省の新しい副大臣と大臣政務官計4人の初登庁が深夜になり、職員ら100人以上が待機して出迎え、日付が変わってからの記者会見があったため、職員が未明まで対応に追われたことが話題になった。

夏の国会議事堂
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副大臣の「出迎え」は論外としても、夕方の本来の退庁時間になって政治家からの指示が来て、翌朝まで作業に追われるケースは珍しくない。翌日の国会答弁の準備に追われる姿などはよく知られた光景だ。災害対策など本当の緊急事態の時は別として、なぜ深夜の仕事がなくならないのだろうか。

「人と人のつながり」で情報が伝わる仕組み

ひとつは霞が関では、「情報の共有」が今でも「属人的」に行われていることだ。人と人のつながりで情報が伝わるが、いまだに電話が主流で、組織的に一斉メールやSNSが情報伝達手段として使われることはない。

幹部官僚は首相官邸や他省庁の幹部たちと個人的にパイプを築き、情報を得る。その多彩な情報源を持つ幹部が重用され、出世していくという傾向も強い。Go To トラベルの一律一時停止の情報を観光庁が早い段階でつかめなかったとすれば、そうした人間関係ができていなかった、ということに、今の仕組みではなるわけだ。

逆に言えば、政策がどこで実質的に決まっているかが見えない、ということになる。日本学術会議の議員の任命拒否問題で、誰がどの段階で6人の任命拒否を議論し、どういうプロセスで決めたのか、国会質問が繰り返されてもいまだにはっきりしない。それは意思決定の実質的なプロセスが決められておらず、幹部官僚や大臣の「裁可」が形式的な儀式になっているため、誰が本当に決めたのかが見えないのだ。情報の共有と決裁フローの明確化、上場企業ならば当たり前のガバナンスの仕組みが欠如しているとも言える。