東大受験で編み出した「理解を深めるための読書術」

本を読む。ただそれだけのことなのに、うまくできずに悩み、苦しんできたことは、僕を含む多くの人に覚えがあることでしょう。『独学大全』(ダイヤモンド社)の著者、読書猿氏でさえ、元々は読書が大の苦手であったといいます。

しかし、ある単純な工夫、マインドセットの刷新を行うだけで、本を読むことのハードルがグッと下がるということも確かです。これは「読書術」をうたった本が市場にあふれていることからもわかるでしょう。読書にも「うまいやり方」と「まずいやり方」があり、技術を身に付けることさえできれば、どんな人でもある一定以上は書物から情報を吸収することができるのです。

かくいう僕も、かつては本を読んでそこから情報を得ることが苦手でした。活字アレルギーを抑えて文章に目を通すところまでは何とかこぎつけても、いったい何が書いてあったのか? と問われると黙りこんでしまうような、そんなずさんな読書をしていました。

しかし、東大受験の中で「いったい何を聞かれているのだろうか?」「著者はいったい何が言いたくてこの文章を書いているのだろうか?」と考えながら読んでいくうちに、僕なりの「理解を深めるための読書術」を確立させることができました。今回は、その中から代表的な方法を3つ、例文を交えながらご紹介させていただこうと思います。

読書をしても知見が深まらないワケ

そもそも、なぜ「読書しても意味が理解できない」とか「本で得た内容を実践に生かすことができない」という事態が起きるのでしょうか? 日本語を母語としているわれわれは「日本語の文章が満足に読めるのであれば、文章が何を意味しているのかも理解できる」と思ってしまいがちです。

読めれば、理解できる。そして理解できれば、実践できる。このように考えるならば、本を読み切った時には、必ずあなたはその本で手引きされていた技能が使えるようになっていたり、もしくはその本の著者の思考法を一部でも身に付けることができたりしているはずです。

例えば、あなたがビジネス書を一冊頑張って読み切ったとします。そして次の日に出勤した時、意気揚々とその本に書いてあった方法論を実践してみようと思い立ったとしましょう。しかし、まったく手が動かない。焦って思い返しても、何をどうすればいいのかがさっぱり見当もつかないし、そもそもよく考えれば、筆者が何を言っていたのかもわからない。こんな経験はないでしょうか?

ずばり、この深刻なギャップは「読者が筆者の言うことをそっくりそのままうのみにしているから起きる」のだと僕は思います。つまり、筆者の言っていることに対して、素直に受け止めすぎているからこそ、このような事態が起きるのです。