これから息子と夫、2人の母親の4人の介護をすることに
一人っ子の清水さんは、確実に母親の介護をすることになる。
すでに89歳の義母も、いつ要介護状態になってもおかしくはない。夫の姉はあてにならず、清水さんが介護をする可能性は高い。
しかし清水さんには、最重度知的障害の息子がいる。子育てと介護でダブルケアだが、実際はたった1人で息子と2人の母親、夫も入れれば4人の世話をすることになる。
集中する負担を、少しでも軽減することはできないだろうか。
2018年にソニー生命保険株式会社が実施した「ダブルケアに関する調査」によると、全国の大学生以下の子どもを持つ30歳~55歳の男女1万7049人に、“子育て”と“親(または義親)の介護”が同時期に発生する状況である「ダブルケア」について聞いたところ、全体で約3割の人がダブルケアを経験していた。
ダブルケア経験率は年齢が上がるにつれて高くなり、50代女性では約4割以上が経験していた。さらに、ダブルケアに対する備えとして行っている(いた)ことを聞いたところ、「特になし」が4割近く。「ダブルケアに対する備えとして行っておいたほうが良かったと思うこと」の1位は、「ダブルケアの分担について親族と話し合う」だった。
多くの人が、ダブルケアに対する備えをしないまま、ダブルケアを経験することになってしまっていることが伺える。
また、ダブルケアのキーパーソン205人に、キーパーソンとなった理由を聞いたところ、男性は約6割が「自身の希望で主に関わりたい(関わりたかった)」と回答しているのに対し、女性は「自分以外に主に(介護)できる人がいない(いなかった)」が6割強と、「自身の希望で主に関わりたい(関わりたかった)」の4割強を上まわる結果となった。
多くの人が準備期間なしでダブルケアに突入する
加えて、同調査では、ダブルケアラーの8割近くが「公的介護サービスは不十分」、7割強が「公的子育て支援は不十分」と回答。ダブルケアラーの多くが、介護施設や保育施設の入所基準にダブルケア加点をするなど、ダブルケア世帯に配慮した介護施設入所基準にすることや、介護も育児もあわせて相談できる行政窓口の設置、ダブルケア経験者が地域で直接相談にのってくれる場、ダブルケア当事者が地域でつながる場を望んでいることが明確になった。
清水さんも、ダブルケアに対する備えなどする間もなく、ダブルケアをキーパーソンとして経験することになってしまった。もちろん、ダブルケアの分担について親族と話し合う暇などなかった。
今でこそ息子の養護学校時代のママ友がいるため、孤独感や不安感を抱えることは少くなったが、ダブルケアについて話せる相手はなかなかいない。
清水さんには、「難しいかもしれないが、優先順位をつけて、何よりも自分を大切にしてほしい」と伝えずにはいられなかった。
※編集部註:2020年12月19日公開時に、リード文でお笑いコンビU字工事の出身地を茨城県としていましたが、正しくは栃木県でした。訂正してお詫びいたします(2021年1月15日11:00追記)