百貨店はセブン‐イレブンを見習うべきだ

一方、なかなか変われないのがアパレル売り場です。ブランドに売り場を貸すビジネスが相変わらず主力で、自店での目利きは機能していません。

ここが百貨店ビジネスの最大の課題です。顧客エージェントモデルへの転換が4強ともに達成できていないのです。

顧客エージェントモデルとは、顧客の代理人として徹底的に顧客の側にたってビジネスを行うビジネスモデルです。日本の小売でこのモデルで一番の成功をしているのはコンビニのセブン‐イレブンだと言えば理解しやすいのではないでしょうか。

奈良のセブン‐イレブン
写真=iStock.com/tupungato
※写真はイメージです

セブンはとにかく主力の顧客だけを見てビジネスをしています。「ビーフシチューと名乗る以上はここまで品質を上げなくては」「この名店の味を届けられたらラーメン通もうなるのではないか」ということで、とにかく店頭に並ぶ商品の質が上がっていく仕組みが出来上がっています。

その背景には共同開発の事業者泣かせの厳しさがあるのですが、そこまで厳しくなれるのはとにかく顧客の代理人の立場で、より顧客として受け入れられるものを追求していくという原則があるからです。ここがセブンと他のコンビニの最大の違いであり、顧客に支持されている点でもあります。

「セブン並み」の百貨店が現れたら最強だ

いずれ百貨店業界の4強の中から、セブン並みに厳しいスタンスで仕入れ先と戦いながら顧客の側に寄り添って成長する企業が出てくるのではないでしょうか。そしてそのように富裕層が求める高い基準をクリアした商品だけを品ぞろえできる百貨店ビジネスモデルが完成したら、そのときには日本の富裕層はその百貨店だけを選ぶようになります。数としては日本の倍以上いると言われる中国やアジアの富裕層も、これまで以上にリピート使いするようになるでしょう。

「成長市場なのになくなってしまいそうだ」という百貨店業界のパラドックスは、新型コロナではなく事業転換できるかどうかにかかっていると私は思うのですがどうでしょうか。

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