失業した中年男性と認知症高齢者が隔離される可能性
【中村】ネオリベのターゲットにされて強引に産業化された介護は、戦後に日本の社会福祉を築き上げてきた人びとのなかに、新興勢力として鬼のネオリベラリストたちが参入、さらに大企業や外資、それにやっていけなくなった飲食店や商店などの零細経営者みたいな人たちも膨大にはいってきて、もうメチャクチャ。
介護保険料は国が給料から引くシステムで、保険料の徴収率は極めて高い。40歳以上の現役世代は社会保険料として強制的に徴収されています。安定した公的な社会保障と思いきや、実際の業務は徹底的に民営化されていて、過度な競争による倒産や廃業、不正や虐待、雇用者や周辺事業者による搾取みたいなことが横行して、とても野蛮な産業です。
さらに恐ろしいことに、次にくるのが、2025年の認知症高齢者問題です。1000万人規模の人が認知症になるといわれていて、何度も言っているように認知症高齢者はネオリベ的には邪魔なわけですね。嫌な予感がします。
【藤井】じゃあ、これからコロナで失業して、あふれた中年男性はやっぱり介護産業に誘導されていくと。
【中村】国や行政には、そういう実績がある。なので、企業が定年45歳制を実行後、失業した中年男性を介護ポエムで集める。
そして、無人島とか超過疎地とか山岳地帯みたいなところに簡易的な介護施設を建てて、家族に捨てられた認知症高齢者と彼らを一緒に輸送するみたいな近未来を想像していた。
【藤井】ディストピア的ですが、ありえますね。でも中年男性はケアが下手なんでしょ? それってケアする方もケアされる方もめちゃくちゃ悲惨じゃないですか。
【中村】本当に悲惨でしょう。虐待まみれだろうし。でも無人島で起こることだから見えない。
かつて構想されていた障がい者の隔離政策
【中村】賃金もポエムで集める段階では高額にして、無人島に輸送後になにかしら理由つけて下げちゃえばいい。介護保険制度は3年に1度改正があって、報酬を上下させて調整している。
家族に捨てられるのは認知症高齢者だけじゃない。企業に捨てられた中年男性もさらに妻や娘に捨てられるだろうから、劣悪な環境で死んじゃってもあまり問題なさそうだし。
【藤井】小説にしても怖すぎますね。「住居と職と介護施設がこの島にくれば格安で得られます」とか、きっとポエム調でいい感じで宣伝されるんでしょう。
50年前、その対象は障がい者でした。高度経済成長期の日本は障がい者政策としてコロニーを作ろうとしていた。核家族化が進むなかで、家庭で障がい者の面倒を見切れなくなってきたんです。
障がい者とその面倒を見るケアワーカーを隔離したコロニーに入れて、社会から完全に分断させるという構想が実際にあった。当時の「青い芝の会」の横田弘さん横塚晃一さんの書いたものを読んでいると、当事者たちがその構想に対して非常に怒って、猛烈に反対している。
当然のことですが。でもいまの話は、もはやこれと同じですよね。障がい者から認知症の老人に代わっただけで。