沖縄では中学生を働かせていたキャバクラがたびたび摘発されている。なぜ問題が再発するのか。政治学者の藤井達夫氏は「『子どもが働いている店を潰せ』という短絡的な発想では問題は解決しない。それより重要なのは貧困家庭への支援だ。しかし、そのコストが省かれるようになっている」という――。(第3回/全3回)

※本稿は、中村淳彦、藤井達夫『日本が壊れる前に 「貧困」の現場から見えるネオリベの構造』(亜紀書房)の一部を再編集したものです。

歌舞伎町
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ネオリベ政策による刑罰の厳罰化

【藤井達夫(政治学者)】ヤクザや風俗は治安に関わる問題です。ネオリベ(新自由主義)的な政府のもとでは治安に関する引き締めは非常に強まる。

規制緩和を行うことで、競争を促すのがネオリベの基本的なやり方ですが、他方で治安は逆に強化される。典型的なのが、アメリカのスリーストライクス・ユーアーアウト法(三振法)、軽犯罪でも三回犯したら終身刑になるという法律が当時、話題になった。

厳罰化への社会の要望が高まってくるのもネオリベの浸透した社会の特徴ともいえるでしょう。

【中村淳彦(ノンフィクションライター)】ネオリベが強化された平成時代に本当にあらゆる刑事罰が厳罰化された。

暴力団関係や性犯罪についてはとくに厳しくなった。僕はヤクザ系雑誌にもかかわっていたので、知り合いが何人も逮捕されていて、無期懲役とか懲役一五年とか。判決はめちゃめちゃ重い。

みんな捕まったのは2000年代半ば、いま思えばちょうど時代の境目だったってことですね。

【藤井】犯罪はなぜ起きるか。そこに貧困や家庭崩壊などがあるから。

少年犯罪が増えているのなら、貧困家庭に経済的支援や教育支援を行って、なるべく貧困を解決し、犯罪を減らす。そうして、治安を守っていく。それが長い歴史のなかで発達してきた社会科学の知見に基づく、福祉国家の考え方。