トヨタ生産方式、STP、AIDMA。ビジネスで威力を発揮する「セオリー」だが、経営はそれに縛られすぎてはならない。理論を超えた「実践」の重要性を説く。

「強み伝いの経営」は永遠には成長しない

ビジネス世界にはセオリーがある。これは、野球や囲碁将棋のそれと同じく、長い多様な経験と、ビジネス当事者の研ぎ澄まされた論理の精華にほかならない。

経営管理で言うと、トヨタ生産方式などは、1つの大事なセオリーだ。その骨格は、需要側の注文に応じて供給側がその供給量なり供給頻度を工夫し、できるかぎり製造工程における仕掛かり在庫をなくすという点にある。

トヨタ自動車自身、その方式を通じて、効率的生産の力を得ただけでなく、多品種を早いサイクルで取り扱うという他社が真似できない市場の力も獲得した。

トヨタがこの方式を思いついたのは、スーパーマーケットの売り場を見てと言われているが、その後このトヨタ方式はコンビニやスーパー等、流通業に逆輸入された。さらには、日用雑貨やアパレルや食品メーカーなどにおいても応用され、店頭で売れたものだけ生産するという「店頭起点のマーケティング」が誕生した。今や、わが国の流通業やメーカーを支える一番のセオリーとなっている。

ビジネスセオリーは、もちろんこれだけではない。マーケティングの世界でも、STPやAIDMAといったセオリーがあり、マーケターはそれらを巧みに利用する。セオリーを知ると知らないとでは大違い。

囲碁将棋でも、そして経営でも、それは変わらない。だが、上級者同士の戦いとなると、そうはいかない。セオリーを遵守して勝ち続けることはできない。