心優しい人が親の介護で自滅の道を歩まないための5つの方法

そういう心優しい人が自滅の道を歩まないようにするためにはどうすればいいのか。筆者自身の経験と、相談事例から導きだした5つの方法を挙げてみたい。

シニア男性
写真=iStock.com/kumikomini
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【1】まずは誰でもいいので、愚痴を吐く。もし見つけられなければ、SNSを使って、呟くのでもいい。自分の中の負のエネルギーは溜め込まずに発散することが有効である。

【2】専門家の窓口を繰り返し頼る。自治体の福祉担当部門、地域包括センター、社会福祉協議会、民間のNPO法人……。ありとあらゆるプロのアドバイスを仰ごう。思わぬ解決方法が見えてくる場合もよくあることだ。ここだけの話、介護は「ゴネた者勝ち」=「諦めずに助けを呼んだ者勝ち」ともいえるのだ。

【3】ケアマネジャーなど、要になってくれるべき人と信頼関係を築こう。もし、肌が合わないなという場合、ケアマネジャーはいつでも変更可能。例えば、介護を受ける側に持病がある場合で、ケアマネジャーに医療系の知識があった方が心強いならば、看護師経験者のケアマネジャー。寝たきりの人を在宅介護する場合であれば、ヘルパー経験のあるケアマネジャーにお願いするというのも一つの方法だ。ケアマネジャーとの相性次第で、介護は天と地ともいうほど変わってくるので、人選は大事にしてほしい。

鳥居りんこ『親の介護をはじめる人へ伝えておきたい10のこと』(ダイヤモンド・ビッグ社)
鳥居りんこ『親の介護をはじめる人へ伝えておきたい10のこと』(ダイヤモンド・ビッグ社)

【4】介護者と要介護者が密にならないように、風通しをよくするべく他人を入れてみる。ある高齢の女性は断固としてデイサービスに行かなかったのだが、新しく担当になった若い男性介護士さんが玄関でシンデレラのように靴を履かしてくれたことがきっかけで、デイサービスを心待ちにするようになったと聞いた。また、ある福祉用具のレンタル業者さんは度々、「ご機嫌伺い」と称して新製品を紹介しがてら話し相手になってくれているので、親子の険悪な雰囲気解消の一翼を担ってくれているそうだ。要介護者の心を解きほぐすのは肉親よりも介護に明るい専門家の方が適任であることも覚えておきたい。

【5】介護者は休息を忘れずに取ろう。機械であってもメンテナンスは必須。ましてや人間には休息が必要だ。ひとときでもいいので、介護から離れる時間を取ろう。介護はひとりで抱え込みがちだが、親族や親戚などから介護を頼める人を探してみることも大切だ。そして、時々は、身も心も介護から離れることがとても大事。そのためにショートステイ(短期入所生活介護)やレスパイト入院(介護家族支援短期入院)というものがある。自宅で介護をしている人の休息を主な目的としたものなので、安心して要介護者を預けることができる。希望する場合はケアマネジャーに言ってみよう。

もちろん、デイサービスやショートステイなど通所型施設の利用が難しくなった場合には、入居型施設の利用も選択肢になることを忘れないでほしい。経験から言わせてもらえば、入居型介護施設も悪くないし、共倒れにならなかったのは施設のおかげだ。

介護は本当に腹立たしいことが多く、介護する側がこのままではノイローゼになるのではないかと悩むことも多い。親子、あるいは夫婦間で怒りの応酬を繰り返す率は高いだろうが、それも「要介護者であるお年寄りの刺激になる!」とプラスに考えて、気持ちの転換を図るほうが好循環に繋がる。

「人間はどう生きたって、他人に迷惑をかけて生きる生き物! それの何が悪い? 社会全体で要介護者を看ればよいのだ!」

そんなふうに半ば開き直って、「頑張りすぎない」介護をすることがコツなのだ。

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