第1回で少し触れたが、医療ツーリズムとは医療サービスの受診や治療を行うために他国を訪れる旅行のこと。対象となるサービスは人間ドックのような「検診」や本格的な「治療」だけでなく、「美容・健康増進」も含まれる。04年時点で400億ドルであった医療ツーリズムの世界市場の規模は06年には600億ドルへ成長。それ以降も市場の裾野を広げており、12年には1000億ドル規模になるものと予測されている。
そうした医療ツーリズムの立ち上げで、国内経済の活性化につなげていくことの重要性を早い段階から指摘していたのが亀田総合病院の亀田隆明理事長だ。
千葉県鴨川市にある同病院は1980年代から在日米軍の患者の受け入れを行っていた関係でグアムやサイパンでも知名度が高まり、現地から一般の患者が訪れるようになった。また、09年9月には日本の病院として初めてアメリカの国際的医療評価機関であるJCIの認証を受けたことでも注目されている。
現在、太平洋を一望できる1泊5万2500円の特別室がある病棟「Kタワー」のワンフロアが空いており、亀田理事長は「そこを外国人患者専用のフロアにしたい。その準備として日本の看護師の資格を持つ中国人ナースを採用して教育している」と語る。JCIの取得も国際的なレベルでの医療の質を保証して、外国人患者を本格的に受け入れていくための布石なのだ。
そして、亀田理事長が声を大にして指摘する経済的波及効果の一つが雇用の拡大である。新日本製鉄君津製鉄所は京葉工業地帯を代表する事業所だが、そこで働く従業員は10年3月末で3416人。一方、亀田総合病院を含めた亀田メディカルセンターおよび関連施設の職員数は5231人と大きく上回る。患者一人に対して医師、看護師など複数のスタッフが必要になり、外国人患者が増えれば、それだけ地元での雇用増へ直結する。