今まで誰も取り組んでいなかったことが不思議なくらい

「読者ランキングで1位を獲得し、他のマスコミも追随しました。日本ではおよそ6人に1人が住宅関係の仕事に従事していることを考えれば、今まで誰も取り組んでいなかったことが不思議なくらいです」(同)

出会いにも恵まれた。当時の同誌編集長は、誰も手掛けていない企画だからこそ価値がある、と考えるタイプだったという。

「『二番煎じはいらない』と、まだ成功するかどうかもわからない企画の後押しをしてくれました。日本を代表する週刊誌の『強さ』の源泉を見た気がしましたね」(同)

笹井恵里子『室温を2度上げると健康寿命は4歳のびる』(光文社新書)
笹井恵里子『室温を2度上げると健康寿命は4歳のびる』(光文社新書)

その後、2018年11月にはWHO(世界保健機関)から「冬の室内温度は18度以上に」という勧告が出された。国際機関に先立ち、最新の研究成果を世に問うたのは、まさに慧眼と言えるだろう。

本書ではタイトルに使われた「室温」のほかに、「湿度」「光」「空気の質」「室内の色」など、さまざまな要素に注目。健康を保つというだけでなく、仕事や勉強での生産性を高める室内環境づくりのヒントも盛り込んだ。

「一見、スタイリッシュに見える白色をオフィスに増やしすぎるのは、実はNG。室内の色と生産性の関係については、本書の発売後に登壇したイベントでも特に興味を持ってもらいました」(同)

膨大なエビデンスと取材をもとにした本書だが、平易な語り口とクイズを交えた構成で、どこから開いても新たな発見を得られる仕掛けが施されている。誰もが過ごす住居を改善するための知見が、誰にでも開かれる1冊だ。

笹井恵里子(ささい・えりこ)
ジャーナリスト
1978年生まれ。「サンデー毎日」記者を経て、2018年よりフリーランスに。著書に『週刊文春 老けない最強食』(文藝春秋)、『救急車が来なくなる日 医療崩壊と再生への道』(NHK出版新書)など。
(撮影=今井一詞)
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