核廃棄物は人間と接触しない地下深い場所で貯蔵・処分が可能

結局、脱炭素計画を絵に描いたモチにしたくなければ、おのずと原子力が浮上するだろう。CO2は出さないし、コストも低い。よく原発に関しては「トイレのないマンション」などというホラー話が語られるが、核廃棄物は絶対に人間と接触することのない地下深い場所に貯蔵・処分すべきで、また、それは可能だ。世界の国々がやろうとしていることを、日本だけができないはずもない。

それどころか、青森の六ヶ所村の燃料サイクル(再処理)がようやく許可されたので、これが稼働し始めれば、最終的に残る高レベルの廃棄物の量は劇的に減る。一人の人間が一生のあいだ原発電気を使ったとしても、その量は単1乾電池1個分ほどだというから、これをガラスに閉じ込めて貯蔵・処分すれば良い。

菅政権がそこまで腹を括っているのかどうかはわからないが、しかし、日本の場合、少なくとも、やる気になれば原発はフルに活用できる。これは絶対の強みだ!

ドイツ送電線
写真提供=川口マーン惠美
ドイツの送電線

原発を蛇蝎の如く嫌うドイツ国民をひどく怒らせたメルケル首相

ところが、それをやれないのがドイツ。ドイツでは2022年までにすべての原発を止めることになっている。

ちなみに、ドイツの脱原発はCDU(キリスト教民主同盟)のメルケル首相が決めたと思っている人が多いが、実は、布石を敷いたのはSPD(社会民主党)のシュレーダー前首相だ。彼は1998年に政権をとった後、エネルギー転換の青写真を作った。それは、原発の新設はせず、今あるものも一定の発電量に達したら徐々に止めていく。その間に省エネを進め、再エネとガス火力を増やし、無理なく脱原発に移行するという、まことに冷静な計画だった。

ところが2009年に政権を奪取したメルケル首相は、その翌年、シュレーダー前首相の脱原発計画を覆し、各原発の稼働期間を一気に平均12年延長した。そして、これが、原発を蛇蝎の如く嫌うドイツ国民をひどく怒らせたことに気づいて青くなるのだが、奇しくも、間もなく地球の裏側で大地震が起こった。