ドイツの脱原発はポピュリズム政策の最たるもの

ところで、「福島がすべてを変えた」という言葉は何だったのか? これは、日本のような高度な技術を持った国でも事故になるのだから原発はやはり危険だと認識したメルケルが、安全確保のために踏み切った政策と解釈されたが、本当にそうだろうか。

ドイツの周辺には原発国がたくさんあり、ひとたびどこかが事故を起こせばどうなるかは、チェルノブイリが証明している。ドイツから原発が消えても、必ずしもドイツが安全にならないことは中学生でもわかる。

しかもドイツ人は去年、果敢にも、2038年までに石炭火力もすべて止めると宣言した。現在のドイツの基幹電源は原発と石炭火力だ。よりによって、これら二つを放棄して、産業先進国が成り立つのか?

しかし、現在のドイツではこのような問題提起はタブーだ。脱原発は国民の総意なので、政治家は怖くて触れないという理由が大きい。そういう意味では、ドイツの脱原発はポピュリズム政策の最たるものだといえるだろう。

オランダはCO2削減達成のため、3~10基の原発新設を検討

今年の9月、オランダ政府が、CO2削減目標の達成のため、3~10基の原発の新設を検討すると発表した。現在、オランダの電源は天然ガスと石炭が8割以上を占める。原発は1973年に建設された1基のみが稼働している。

しかし、電気需要は目下のところ、電気自動車の増加や水素エネルギーの振興などで急激に増えつつあり、これを石炭火力で賄っているとパリ協定のCO2削減目標は守れない。そこで原発シフトという抜本的なエネルギー改革が浮上した。

ルッテ首相いわく、「風と太陽で7割の電気を賄うというのは非現実的」。

もちろん、その背景には、ロシアのガスへの過剰な依存を避けたいという強い意志も働いている。

オランダは、国土の4分の1が海抜ゼロメートル以下だが、17世紀以来の治水の歴史がある。だから原発に関しても、高潮や洪水に厳重な対策を施せば安全確保は可能という見解に立っている。地震も津波もないドイツが原発を止めようとしているのとは対照的だ。

しかも人々は、巨大な風車と太陽光パネルで国土が覆われることも好まない。「われわれはオランダをぐちゃぐちゃな風景の国にするつもりはない」。新しい原発は2030年代の稼働を目指し、2025年には建設に取り掛かりたいという。