業者から掲示された金額は「やや高め」の5万円だった

「でもフローリングにゲル状になった血液がこびりついてしまい、ガラスの破片もそこにくっついていて、自分でいくら拭いてもとれません。しかもだんだん気分が悪くなってきて……。インターネットで『特殊清掃』と検索して、『小さい案件でもいい』と書いてあるところに連絡しました。電話をすると、その会社はすぐに来てくれたんです」

「特殊清掃」とは、孤独死などで遺体の発見が遅れ、ダメージを受けた室内を原状回復する清掃作業のことだ。専門業者だけでなく、これまで連載に登場してきた生前・遺品整理を手がける「あんしんネット」のような整理業者が行うこともある。

もしあなたがA子さんの立場だったら、どうするだろうか。また特殊清掃にお願いする場合は、いくらまで出せるだろう。

片づけた不要品は段ボールにつめて輸送する。その後、産廃業者に処理を依頼する。
撮影=今井一詞
片付けた不用品は段ボールに仕分け・梱包し、その後一廃・産廃業者に処理を依頼する。

A子さんの依頼は「1メートル四方の血の拭きとり」で、業者から掲示された金額は5万円。

「あんしんネット」の事業責任者の石見良教さんに伝えると、「やや高め」とのこと。

「ですが最低でも3万円はするでしょう。問題は金額よりも、その後の処理といえる。ひどい業者は血や体液をふきとったタオルをトイレに隠すこともあります。特殊清掃は資格がないため、法律上は誰でも始められますが、本来は現場の状況によって使用する薬剤が異なるなど、かなりのノウハウが必要な仕事なんです」

見積もりでは20万円だったが、総額260万円を請求する業者も

できるところまでは遺族が行い、あとは話してみて信頼できる業者に託すことを、石見さんは勧める。

また、「孤独死の現場」は特殊清掃がからむが、単なるその現場の清掃にとどまらず、室内の遺品整理もあわせて頼む遺族が多い。

今、遺品整理の需要が高まるにつれ、整理を専門とする業者もみるみる増えていき、悪徳業者がはびこっているのが問題になっている。

“整理業”は特別な許認可が不要で、基準となる値段がない。つまり料金の内訳が不透明 なため、いくらでも上乗せできてしまう。このため一部には依頼人に法外な料金を請求する業者がいる。

先に荷物をトラックに積み込んでしまって、あとから高額な作業代を請求したり、現金や価値のある品が出てきても黙って持っていく業者もいる。見積もりでは20万円だったのに、あとから260万円を請求されて、困った依頼人が消費者センターに泣きつくという事例もあった。また悪徳業者の中には、廃棄物の処分代金を惜しんで正規の処分場と契約を結ばす、無料で出せる家庭ゴミとして処分してしまうところもある。これは不法投棄にあたり、業者が摘発されれば依頼した人も罪を問われてしまう。