新耐震基準を満たしていればOKではない

——なるほど。でも、管理費と修繕積立金が将来どれぐらい値上がりするかなんて、ちょっと予想つかないですよね?

そうですね。ただし、日本は地震が避けられないことを考えると、そのリスクを最小化できるよう、耐震性の高いマンションを選ぶことがマストです。

住宅の耐震基準については、「旧耐震」とか「新耐震」という言葉を聞いたことがあるんじゃないでしょうか。建築基準法が1981年に改正されたときに耐震基準が大幅に見直され、それ以前の耐震基準を「旧耐震基準」、それ以降の耐震基準を「新耐震基準」と呼んで区別しています。

マンションの耐震基準は重要なチェックポイント

ちなみに、もし戸建ての場合は、2000年の建築基準法改正の前後どちらに建てられたものかも意識したいところです。

——マンションなら中古もOKとのことでしたが、旧耐震の物件、つまり築40年を超えるとさすがに古すぎということですね?

ええ、もちろん新耐震に越したことはありませんが、それが絶対条件というほどでもありません。旧耐震のマンションだと、もともとの耐久性が低いのは間違いないわけですが、しっかりした耐震補強を行っている物件であれば、わりと安心できます。先ほど言ったように、戸数が多くて、かつ管理がしっかりしているマンションは、たとえ古くても耐震補強をしているはずです。

繰り返しになりますが、マンションの場合、すべての鍵を握るのは、結局のところ管理体制がきちんとしているかどうかです。そこさえクリアしていて、ほかの諸条件がすごく気に入った物件に巡り合えたら、新耐震にこだわる必要はないでしょう。

東京の西側は多摩川を挟んで丘陵地帯、東側は荒川を挟んで低地

——よかった! ちょっと選択の幅が広がった感じがします。

さらにいうと、実際に地震に強いかどうかというのは、建物の耐震性だけでは測れないんですよ。どういう土地に立っているか、が非常に大きく関係してくるんです。新耐震基準は多くの建物が倒壊した宮城県沖地震(1978年)をきっかけに導入されたものです。

私は仙台出身なので、子ども時代にこの地震の直撃を受けています。私が住んでいたマンションは当然、旧耐震ですが、地盤がよかったことからまったくの無傷でした。ごく大雑把に言えば、高台に位置する建物のほうが、低地に立っているものより圧倒的に地震に強いといわれています。

例えば東京の場合、地形をざっくり見ると、岩盤が強固な武蔵野台地が大きく広がり、その西側は多摩川を挟んで丘陵地帯、東側は荒川を挟んで低地になります。もちろん、もっと細かい河川もたくさん流れていますから、浸食されて低地になった流域部分と、その周辺のやや高い部分とが入り組んでいます。そのどこに立っているかで、地震への耐性が変わってきます。

街なかの短い距離を歩いているだけだとわかりにくいですが、都心部も意外と起伏に富んでいるんですよね。ふつうの地図ではなく、地形図を見れば、昔どういう地層だったかもわかります。真剣に不動産投資をしている人であれば、そこまで調べあげて投資物件を選ぶのが常識なんですよ。