修繕積立金と管理組合について知っておくべきこと

——なるほど、購入価格だけじゃなくて、維持費のことも考えないといけないんですね。でも、維持費って、買ったときからそんなに変わってしまうこともあるんですか? 聞けば聞くほど気にすべきことが増えていきます。

それはそうですよ。住まいは「買って終わり」ではありません。快適に、かつ安全に暮らしていくには適切な管理が欠かせません。そのため、住宅ローンのほか、月々の管理費や修繕積立金が必要です。

しかもこの2つのコストは定額で据え置かれるわけではありません。デベロッパーとしては、早く空室を埋めたいわけですし、まして新築や築浅物件であれば、大掛かりな修繕費がかかるのはだいぶ先ですから、購入時は修繕積立金が低めに抑えられていることが多い。でも、10年、15年と住み続けているうちに、値上がりしていくことも特に珍しくありません。当初は合計1万5000円程度だった管理費と修繕積立金が、20〜30年後には合計4万~5万円ぐらいまで値上がりする可能性だってあります。

大型マンションのエントランス
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——ローン返済がギリギリの計画だと危ないんですね。ところで、管理費と修繕積立金ってどう違うんですか?

ひと口に「管理」といっても、日常的な管理と中・長期的な管理の2つがあるんです。一つは共用廊下やゴミ置き場の清掃といった、「生活を快適に保つ」ための管理。これにあてられるのが通常「管理費」と呼ばれるものです。

もう一つは、数年ごとに外壁を塗り替えたり、防水処理をしたりといった、「建物を維持する」ための管理です。入居するときに「長期修繕計画書」といった書類をもらうはずですが、そこに記されている修繕工事や建築診断に使われるのが「修繕積立金」です。

分譲マンションを購入すると、自動的に管理組合の構成員になり、実際の管理業務は組合が管理会社に委託するのが一般的です。

分譲マンションは戸数が多いほうがいい理由

——管理組合なんてあるんですね。となると、賃貸より分譲のほうが、「ご近所づきあい」が多くなるんでしょうか?

ある意味、そうなりますね。分譲マンションは「持ち家」といっても集合住宅ですから、組合員同士、利害を共有しているわけです。建物全体が快適に保たれていないのに、自分の住まいだけが快適ということはありえませんから。

ここで気づいてほしいのは、管理組合の規模がある程度大きいほうが建物の維持管理には有利だということです。つまり、分譲マンションは戸数が多いほうがいいんです。これはほぼ100パーセント断言できます。

——どうしてですか? 人数が多いとご近所づきあいの手間も増えそうですが……。

日常の管理にしても定期的な修繕にしても、管理組合の規模が大きいほうが、当然ながら予算規模が大きくなりますよね。業務を委託されている管理会社から見れば、戸数が多いマンションのほうが「大口顧客」となるわけです。大口と小口の顧客があった場合、どうしたって大口のほうに積極的に対応するのが自然だと思いませんか? 「そんなの不公平」と感じるかもしれませんが、管理会社もビジネスですから、より儲かる仕事を優先するのは、まあ仕方ありません。

しかも、戸数の少ないマンションの場合、もし住民が少しずつ減っていくようなことになると、1戸あたりの負担がすごく増えることになります。今は高齢で一人暮らしの人も多い。その方が亡くなった場合、親族が相続なり売却なり、きちんと手続きをしてくれればいいんですが、住民不在のまましばらく放置されてしまうことも少なくないんです。

そうやって、1人抜け、2人抜けしていくうちに、住み続けている家庭への負担がじわじわと重くなっていくわけです。戸数が減ったら、日常の管理費だって値上げせざるをえなくなりますよね。

先ほどのタワマンについてお伝えしたことと併せ、経済合理性の点から考えると、あまり高層ではなく戸数の多い物件が最良の選択といえます。