目の疲れ対策はほんの1秒の意識から
「失明する病気」の範囲には入らなくても、目の疲れが慢性的であったり、目が乾く「ドライアイ」の症状に悩む人も多いだろう。目の慢性疲労に詳しい梶田眼科院長の梶田雅義医師によると「スマートフォンが普及してから目の疲れを訴える人が急増した」という。さらに2020年は新型コロナ感染症拡大防止のための外出自粛によっても眼精疲労を訴える人が多くなったという。
「視力が良い=良い目ではありません。これだけ近くを見ることが多い現代社会では、遠くだけに焦点を合わせるために作られたコンタクトや眼鏡は“過矯正”になりやすいのです。つまりよく見えすぎるということ。近いところを凝視したままピント調節機能を使わないために、筋肉がこり固まり、疲れ目を引き起こすのです」(梶田医師)
梶田医師が症状改善のために強く勧める方法は2つある。1つは、時々数メートル先に目の焦点を移すこと。
「目の周りの筋肉を動かすことで、疲れ方が変わります。目を酷使する作業を50分続けたら10分の休憩を、とよく言われますが、そんなに休息時間を持てない人のほうが多いでしょう。10分間に1秒でいいので、ごく近くのものを見ていたところから、2~3メートル先に目の焦点を移すようにしましょう」(同)
もう1つの対策は、ピント調節機能が低下してくる30代半ば以降に、遠近両用のコンタクトレンズや眼鏡を使うこと、という。
「遠近両用というと、手元が見えづらくなる老眼の人に向けたものと思いがちですが、そうではありません。たとえると電動アシスト自転車のようなもの。遠近両用では人と話す1メートルくらいの距離が最も見やすいように設定され、目の機能を支えます」(同)
コストは眼鏡の場合は一概に言えないが、コンタクトは通常の単一焦点のものより2割増しとのこと。
また、目の乾きが気になるときは、電子レンジで数10秒、人肌程度に温めた蒸しタオルで目を温めるのも効果的。
「温めることでまぶたにあるマイボーム腺の出口のつまりが軽減し、脂が出やすくなります。マイボーム腺の状態が悪いと、涙の蒸発を防いでいる脂の層がうまく作られずドライアイになります」(飯田医師)
目の表面が乾燥するドライアイや眼精疲労をあなどっていると、視力低下を招く重大な病気を見逃すことも。
“危険な芽”は早めに摘み取り、快適に楽に「見える目」を維持しよう。