ネットにあふれる、むき出しのヘイトとどう闘うべきか

母親と手を繋ぎ歩いていた10歳くらいの男の子がパッと母親の手をはらい、両耳を塞いだ。連休真っただ中の2020年9月20日、JR川崎駅前は日の丸を掲げ、ヘイトスピーチを繰り返すレイシスト集団、その声をかき消そうとするカウンターデモの参加者、さらにその周りを囲む警察官達で騒然としていた。

2020年9月、川崎駅前にて筆者撮影
2020年9月、川崎駅前にて筆者撮影

川崎市は、全国で初めてヘイトスピーチへの罰則付きの条例が20年7月に施行されたばかりだ。この条例はヘイトと闘ってきた人々にとって大きな「希望の一歩」であった。その一方でヘイトデモやオンラインでのヘイトスピーチは止むことがない。

20年4月、私はNHKの「バリバラ」という番組に出演した。その番組では、川崎市での条例制定に大きく関わり、その一方で自身もヘイトスピーチの被害を受けている在日コリアンの崔江以子チェ・カンイジャさんも一緒だった。川崎の多文化交流施設「ふれあい館」で働く崔さんは温かい人柄で、多くの子ども達から「オモニ」(お母さん)「オンニ」(お姉さん)と呼ばれ、親しまれている。しかし番組に出ることに対し崔さんはとても悩んだ。