(前編:「コロナで学力二極化」自分でどんどん賢くなる子とダメになる子の親は何が違うのか、から続く)
「生徒を集めたい学校」が実施するユニークな2021年中学受験
――前編では、中高一貫校のオンライン授業の取り組みについてもお聞きしましたが、この冬、オンライン入試は実施されるのでしょうか。
【安田】在宅によるオンライン入試を実施する学校は、帰国生入試以外では、極めて少ないです。東京私立中学高等学校協会は「オンライン入試は公正・公平性が担保されない」として自粛を決定しています。
――受験生家庭から「オンライン入試は勝手が違うから不安だ」との声を多く耳にしていたので、オンライン入試での混乱は避けられそうですね。
「勝手が違う」といえば、近年は、2月1日から本番を迎える東京、神奈川の受験生も2月3日までに受験を終わらせたいという意向が強いです。各学校も生徒募集の観点から、いわゆる「午後入試」を実施するようになりました。そのため、一昔前とは違い「短期決戦型」になっていますが、来年の「午後入試」の状況はいかがでしょうか?
【安田】今年2月に終えた2020年入試では、東京の私立中学で受験者数が多かった上位30校合計での入試回数は127回でした(複数日、複数回実施校があるため)。1校当たりの入試回数にすると4.23回。共学校は特に入試回数が多い傾向にありました。
特に「午後入試」を設ける学校は増えています。上位30校に限っても、午後入試の回数は47回にのぼります。2010年当時の午後入試は2科4科型(国語・算数の2科目受験か、国算理社の4科目受験を選択可能)でしたが、近年は別形態で行う学校が増えてきています。巣鴨(豊島区)、世田谷学園(世田谷区)は算数入試、共立女子(千代田区)は合科型(記述・論述型)入試、山脇学園(港区)は国語か算数の選択1科入試、探究サイエンス入試などです。
2021年に初めて午後入試を行う学校は獨協(文京区)と神奈川大学附属(神奈川県横浜市緑区)。いずれも、2月1日に2科で実施します。この2校はかなり出願が増えると予想されています。
選抜方法が多様化「長期間の勉強の積み重ねが必要でない入試」も
――午後入試はもはや珍しくなくなってきましたね。「早く決めてしまいたい」と「全落ちは避けたい」という保護者の気持ちが交錯しているのでしょうか。ただ、受験生にとっては午前から午後まで1日中、試験問題と格闘することになります。今年の例で言えば、2月1日から2月4日まで連続7校受験という子もいました。過酷すぎる戦いだと思います。
また、昨年の栄光ゼミナールの調査では、小6の夏休み以降の平日の平均学習時間で最も多かった回答は「3~5時間」でした。学校もあるわけですから大変です。長期休みの際はそれこそ朝から晩まで講習で、その後、自宅学習。日曜日は模試ということもあります。
これは中学受験が子どもに相当な負荷をかけていることの一例ですが、これに異を唱える入試も出現してきましたね。
【安田】そうですね。最近の入試の特徴に、選抜方法の多様化があります。その背景にはもちろん、学校側の事情もあります。受験してくれる層の掘り起こしとともに、先に述べたように、コロナ禍で教科学力に自信を失っている受験生が増えているという状況を受け、学校側も長期間の勉強の積み重ねが必要でない入試を設けるところが一段と増えているのです。