コロナ不況で公立中高一貫校の志望者増加の影響も大きい

――「総合的な思考力」を問う適性検査型入試は、公立中高一貫校の入試選抜方法ですが、この受け皿を狙った私立中学が、取り入れるようになりました。

【安田】「適性検査型入試」はすでに多くの学校で実施されていますが、2021年度入試でも今後のコロナ不況で公立中高一貫校の志望者が増えることをにらみ、新たに「適性検査型入試」を行うところがあります。

【図表】適性検査型入試

などが、そうです。

コロナ対策で市川中学は試験会場を例年の1.5倍の広さに

――入試が多岐にわたる背景には、多様化する社会で、思考力や判断力、そして発想力を評価しようとする社会の機運があります。中学入試も社会的需要に応じて、敏感に反応しているということなんですね。いずれにしても、コロナ禍での受験になりますが、試験当日について、何か大きな変更点などはありますか。

【安田】コロナ禍の3密を避けるという意味合いで、他会場を借りて入試を行う学校があります。

例えば、毎年、1月の初回入試で6000人もの受験生を集める埼玉県の栄東中学(さいたま市)は入試日を2日間、会場を3カ所に分散すると発表しています。幕張メッセを受験会場としていることで有名な千葉県の市川中学(市川市)は会場を例年の1.5倍の広さにして実施する予定です。

各学校とも、ネット出願の解禁、出題範囲の限定、試験時間の短縮、トイレ休憩の延長、面接の取りやめ、試験終了後の分散退場、WEB合格発表など、新型コロナ感染防止対策に心を配っているのが見て取れます。

さらに、保護者控室を設けない学校も多数あります。通常の入試では風物詩とも言える校門前での塾の激励も自粛を呼びかける学校は多いです。

このように例年とは異なる入試となっているので、注意が必要です。

――最後に、コロナ禍での受験に保護者の方もナーバスになっていると思いますが、保護者の皆さんへのアドバイスをお願いします。

【安田】今年は勝手が違い、志望校の文化祭や体育祭を見て、モチベーションを高めることもかなわなかった受験生が多いと思います。しかし、全員が同じ条件でもあるわけです。

ここは、もうある意味、開き直って「やれることだけ、やる!」という作戦でいきましょう。こんな状況下でも、お子さんが頑張ってきたことは確かなのですから。それを認めてあげて、これからは特に「前向きな気持ち」をつくる方針でいってください。

また、新型コロナウイルスの猛威は変わらず予断を許さない状況ですので、募集要項の変更が今後もないとは言えません。受験校の最新情報はHPで日々、確認するようにしてください。とにかく、健康第一です。家族全員で感染対策をして、万全な状態で入試に挑めることを願っています。

――ありがとうございました。

【前編・後編を終えて、鳥居りんこ氏の総評】

近年は「社会階層の二極化」が指摘され続けているが、中学受験界にも、その波はいや応なく押し寄せている。コロナ前も私立中高一貫校は少子化という事実を踏まえ、生き残りを賭けて、必死にならざるを得ない面があったが、コロナショックを受け、いよいよ、近い将来、募集停止に追い込まれる中学が出る可能性もないとはいえない。

ただ、多くの中高一貫校を取材している立場から言えば、教師陣の危機感は相当なものがあり、それが逆に「教育現場」を活性化する起爆剤になる可能性もある。

保護者は、これまで以上に学校を見る目を養う必要があると同時に、どの環境に置けばわが子の長所がやがて花開いていくのかを冷静に見極めることが肝要だろう。

(構成=鳥居りんこ)
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