11月19日は「国際男性デー」。男性の健康や生き方を見つめる目的で始まり、最近は日本でも取り上げられるようになりました。日本の男性はなぜ生きづらさを感じがちなのか、そうした大人にしないために親が知っておくべきこととは──。男性学の第一人者、田中俊之先生が解説します。
子どもと手をつなぎ、一緒に歩く両親
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競争心や男らしさは本当に必要か

日本では2010年代以降、男性の生き方を問い直す動きが進んでいます。働き方改革や女性活躍推進、「#Me Too」運動などもそのひとつ。つい最近では、弁護士で自身も男の子の母親である太田啓子さんの著書『これからの男の子たちへ』も大きな話題になりました。

この本には、ジェンダー不平等の社会で男の子が育ってしまうことの問題点が実践的に書かれていて、僕も息子を持つ親の一人として、深く共感しながら読みました。日本では、男の子は「競争に勝つ」ことや「男らしさ」を重視して育てられがちです。僕は、こうした育て方は、大人になってからの生きづらさにつながるのではないかと考えています。

大学でも、性別分業やジェンダー不平等を、まったく悪気なく「そういうものだ」と思ってきた学生は少なくありません。例えば、ある男子学生は高校時代、部室の掃除は女子部員の仕事だったと話してくれました。大学でジェンダーの問題を学んで初めてそれはおかしいと気づき、もっと早くにそうした視点を持ちたかったと語っていました。

これは本人の元々の特性ではなく、「男の子らしく」育てられた結果とも言えます。しかし、今後の社会でますます多様化が進んでいくことを考えると、旧来の男らしさや性別分業意識は、むしろ変えるべきものとして考える必要があります。そのためにも、僕は次の3つの育て方はもうやめたほうがいいと思っています。