人はなぜ「宝くじは当たる」という間違えた信念を持つのか。データサイエンティストの松本健太郎氏は「人間は確率に弱い生き物だ。運や思い込みを優先させ、確率を無視した直観的な行動をしてしまう。だから『買い続けていれば、いつか当たる』と考えてしまう」という――。
※本稿は、松本健太郎『人は悪魔に熱狂する 悪と欲望の行動経済学』(毎日新聞出版)の一部を再編集したものです。
なぜ「宝くじ」が売れるのか
筆者が今一番好きなバラエティ番組はなにかと問われれば、テレビ朝日系列「10万円でできるかな」だと答えます。この番組は、10万円分の宝くじやスクラッチ、1000円ガチャ、福袋などを10万円分だけ購入し、元が取れるかどうかを「Kis-My-Ft2」メンバーが体を張ったロケをして、そのVTRを「サンドウィッチマン」が検証する構成です。
筆者もたまにスクラッチを購入します。買うのは決まって「わんにゃんスクラッチ」です。犬の散歩道の帰りに2000円ほど購入して、当たると良いなぁ、当たったら美味しい晩御飯を食べたいなぁなんて考えながらスクラッチを削ります。ほとんど外れで、良くて6等200円がせいぜいですので、たいていは購入資金の2000円をパーにしています。
宝くじやスクラッチを買う人に向かって「お金をドブに捨てているようなもの」「期待値が元手を下回っているくじを買うのは情弱のやること」と批判したくなる人もいるでしょう。筆者もそういう言葉を掛けられた経験が何度もあります。
ちなみに期待値とは、ある確率的なイベントにおける結果の平均値を意味します。得られる結果の平均だと捉えれば良いでしょう。例えば、1~6まであるサイコロの目の期待値は3.5です。出る目はどれも同じ確率です。
1が出る確率と6が出る確率は同じです。どの目が出るかは6通りの結果が考えられますが、その結果の平均を取ると3.5になります。これが期待値です。